2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域差を考慮した若者の「甘え」と友人関係に関する研究
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24530819
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷 冬彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70320851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 博史 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 非常勤講師 (30573042)
稲垣 実果 京都聖母女学院短期大学, 児童教育学科, 講師 (40537990)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 民俗学 / 甘え / 友人関係 / パーソナリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
「甘え」は日本人の対人関係を捉える上で有効であるとされながらも、日本国内における地域差については看過されてきた。例えば、民俗学的には、関西の若者は同年齢の気の合う者同士に限定して「ツレ」の関係を結ぶとされる。本研究は若者の「甘え」や友人関係のあり方について、民俗学的視点を取り入れつつ関東と関西で比較検討することによって、若者心理の新たな側面を明らかにすることを目的とした。 ツレの習俗については、関東と関西の村落を対象に民俗学的な調査・分析を行い、民俗学的には関西のみにツレ関係が結ばれること、ツレは集落内に居住する年齢が近い気の合う同性の友人を相手に結ばれる関係であることを確認し、伝統的友人関係においては地域差が見られることを示した。 一方、心理学的な調査・分析の結果、関西でツレの関係をとっている者の方が、そうでない者に比べ、「甘え」に対して否定的な態度をとっている傾向があった。この結果から、関西の若者においては、ツレのように親密な関係を持っていながらも、その関係において「甘え」を認められないアンビバレントな心性を持つ傾向があることが示唆された。 また、友人関係尺度、甘え尺度の下位尺度得点について因子分析を行ったところ、関西のみ、友人関係の「やさしさ(他人の内面に深入りしない)志向」を別のものと認識する傾向が示された。すなわち、関東の若者は、友人関係において他人の内面に深入りしない気遣いが肯定的な面と捉えられている一方で、関西においては他人の内面に深入りするというのは,甘えや友人関係の肯定的側面とは違うと認識していることが明らかになった。 以上の結果により、関東と関西では「甘え」や友人関係の持ち方に地域差があることの一端が明らかになった。今後はこれらの視点も踏まえ更なる若者の心理的問題への応用に発展させていくことが課題となるであろう。
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