2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における教示行為の発達とその認知的基盤:縦断研究による検討
Project/Area Number |
24530820
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教示行為 / 幼児 / 認知発達 / 社会的学習 |
Research Abstract |
本研究は,幼児がいかに他者に知識や技能を教えるのか,効果的な教示を行うためにどのような認知的基盤が必要なのかを明らかにすることを目的としている。そのため,2012年度は次のことを行った。 1)日常保育場面の観察:一つの保育園の3歳児クラスにおいて計7日間の観察を行い,教示行為に関するエピソードを記録した。その多くは,教え手となる子どもが始発するが,知識を伝達するというよりも,やってみせるという形式であった。 2)半統制場面の観察:3歳児17名,4歳児18名を対象に,折り紙を実験者に教えてもらう場面を観察した。詳細な分析は現在行っているところだが,3歳児に関しては,学習者のエラーに注意を向けることはなく,上記の観察場面と同様に,自分で折り紙を折ることに専念し,4歳児の一部が,学習者の注意を引いて教示することが見られるようになった。 3)第三者からの社会的学習に関する実験:1)の観察および保育者との面談から,子どもが教示者になる上で,子ども自身が他者の行為から学ぶことは重要であると示唆された。特に,他者が直接に注意を喚起するペダゴジー文脈(Geregely & Csibra,2005)ではなく,他者がキューを出さない第三者的文脈(third-party context)であっても,子どもは他者を通して自発的に学ぶことは,重要な学習方略となり,子ども同士の学びあいや教えあいを促進すると考えられる。そこで,2)と同じ子どもを対象に,積木構成課題と仕掛け箱課題(いずれも補助的手段を利用しないと達成不可能なもの)を与え,子どもから離れた場所で実験補助者も(対象児にはいっさい働きかけず)その課題に挑戦するという場面を設定した。分析途中であるが,第三者からの学習とそのことの自覚において発達的変化が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した日常保育場面と半統制場面の観察を実施して,本研究のターゲットである教示行為について日常場面と限定した場面とで確認することができた。当初,2歳児クラスも観察対象にあげていたが,限定された時間において,教示行為をより多く効率的に観察することに主眼を置くことにして,日常保育場面の観察は3歳児クラスに限定した。 日常保育場面の観察と保育者との面談を通して,本研究の計画段階で想定していた子どもの「学習に関する素朴理論」が重要な要因であることが示唆された。特に他者の振る舞いや行為からポイントとなる部分を取り入れることが,有効な学習方略となり,その有効性を子ども自身が自覚しているかどうかが,他者に教える側にまわる場合に重要な要因となると考えられた。そこで,本年度,新たに実験を追加して行い,本研究の目的達成に寄与すると思われる興味深い知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2012年度に実施した観察および実験のデータを分析して,3,4歳児における教示行為の特徴に関する研究成果を発表する。 2)2012年度3歳児クラスに在籍していた幼児について,2013年度についても教示行為の観察と実験を行い,縦断的データに基づいて,教示行為の発達的変化に関する検討を行う。 3)昨年度に新たに実施した,第三者からの社会的学習に関する実験データの分析を通して,幼児が他者の振る舞いから学習するプロセスについて検討し,2013年度以降,この実験の改良を行いつつ,子どもの学びのスタイルと教示行為の関連について明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品が当初計画より安価であったため,次年度使用分が若干生じた。2013年度分とあわせて,観察記録を保存する消耗品などとして適正に執行する。
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