2013 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における教示行為の発達とその認知的基盤:縦断研究による検討
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24530820
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Keywords | 教示行為 / 幼児 / 社会的学習 / 認知発達 |
Research Abstract |
本研究は,幼児期の教示行為に関して,「知識・技能・規範性の不足している他者の誤った行為を,目標とする行為に修正する意図的な行為」と広義に規定し,その発達プロセスと認知的基盤について縦断的に検討することを目的とする。2013年度は次のことを行った。 1)教示行為の縦断的観察調査: 昨年度3歳時に本研究に参加した4歳児を対象に,折り紙の作り方を学習者(大学院生)に教える半統制場面の観察を行った。詳細な分析は途中であるが,3歳時点では学習者を意識することなく,自分自身で折り紙を折っていた子どもがほとんどであったのに対して,4歳時においては学習者の様子をモニターすることが増す傾向があった。 2)これまでの実験データの再分析: 4,5歳児を対象にした実験データ(一昨年度に実施)を再分析し,学習者のエラーに対する対処は「学習プロセスの自覚」と,学習者を尊重した演示方略は心の理論と相関が高いことが明らかになった。「学習プロセスの自覚」は,ある技能を習得するのに他者から教えられた経験を想起できたり,上達に必要な工夫を理解している度合いを示すものであり,自身の学習プロセスを自覚することは他者を主体にして教示するために有効であることが示唆された。 3)third-party learningの自覚に関する実験:自身の学習方略の自覚を確かめるために,他者が子どもに合図を出さないで問題解決する状況で,対象児が観察学習する実験場面を設定した。1)の調査に参加した4歳児を対象に,この場面に参加させて学習成立後,問題解決方略に関する質問を行った。その結果,4歳児において,他者の観察をして問題解決をしたにも関わらず,自分で考えたという者が存在した。今後,この結果と教示方略の関連について分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した縦断研究を継続して,3歳から4歳への教示行為の発達的変化について観察データを蓄積することができた。そこで得られた知見は,研究代表者のこれまでの研究結果を裏づけるものである。 加えて新たに,教示行為の発達を規定する要因として,本人の「学習プロセスの自覚」が重要となることをこれまでの研究成果によって確認することができ,その自覚程度を確かめる実験的方法について具体的に検討することができた。これをさらに精査していくことで,教示と学習の相互関連性を考える下地ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2012年度~2013年度に収集した,教示行為の観察データと,2014年度に実施する観察データをつきあわせて,3年間にわたる教示行為の発達的変化について整理する。 2)教示行為の発達について本研究で得られた知見を総合して,幼児期における教示行為の発達プロセスに関するモデルを提案して,その認知発達的基盤について検討する。 3)本研究を踏まえて,幼児が,直接的な指示がなくても他者の振る舞いから学ぶプロセスについて検討し,幼児集団における「文化伝播」と教示行為の関係について仮説的モデルを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料整理を効率的に行うことができて,謝金の支出が予定より下回ったため,次年度使用分が若干生じた。 2014年度分と合わせて,研究成果を記録する消耗品などとして適正に執行する。
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