2014 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における教示行為の発達とその認知的基盤:縦断研究による検討
Project/Area Number |
24530820
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教示行為 / 幼児 / 縦断研究 / 心の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,幼児期の教示行為に関して,「知識・技能・規範性の不足している他者の誤った行為を,目標とする行為に修正する意図的な行為」と広義に規定し,その発達プロセスを縦断的に検討した。幼児が折り紙を使ったチューリップの作り方を学習者に教える半統制場面を設定し,その途中で学習者は折り方を間違えることを装った。2012年度に3歳児であった幼児を対象に,毎年,この課題を実施して,2013年度は4歳時点,2014年度は5歳児点でのデータを収集して縦断的な分析を行った。その結果,得られた知見は以下の通りである。 1.折り紙という課題の性質上,どの年齢時期においても,幼児自身が実際に折りながら教示することが基本となっていたが,言語の使用は4歳時点より増加した。また,学習者の進行状況を確認するためのモニタリングも4歳時点で多くなった。 2.折り紙を使っても,実際に折ってしまわないで,折るふりをするのに留める間接的な教示が,4歳時点と5歳時点で多く確認できた。こうした教え方は,学習者を主体にしたものといえる。 3.その一方で,4歳時点では,学習者が折り方を間違えると,学習者の折り紙を引き寄せて代行してしまうことも,3歳時点同様に観察された。5歳時点になると,そうした代行は減少して,学習者の進行を待って,学習者自身ができるだけ独力で学習する機会を与えようとしていた。 以上の結果から,4歳時点より教示方略は洗練されてくるが,相手の熟達を意図した教え方は5歳時点より発達することがわかった。また,そうした教示の質的変化と心の理論課題との関連は認められず,観察可能な技能の熟達に関する理解など,従来の研究が扱っていなかった認知能力との関連が示唆された。本研究の成果は,幼児が仲間集団において獲得していく社会性を,教え合いという観点から検討する素材を提供するものといえる。
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