2013 Fiscal Year Research-status Report
乳児の非言語情報に対する成人の生理的・心理的反応解明への多角的アプローチ
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24530831
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
庭野 賀津子 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (30458202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪川 宏 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (30227467)
田邊 素子 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (30513618)
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Keywords | NIRS / 脳血流反応 / 生理的反応 / 心理的反応 / IDS(対乳児発話) / 親性の発達 / 乳児 / 青年期 |
Research Abstract |
本研究の目的は、言語獲得以前の乳児が表出する泣き声や表情による非言語情報に対して、育児未経験の青年が生理学的、心理学的にどのような反応を示すのかについて、脳科学、生理学、心理学、言語学的観点から多角的にアプローチし、解明することである。2年目にあたる今年度は、昨年度のパイロットスタディの結果を踏まえて、実験デザインの内容や手順の修正を行い、被験者約30名に対して実験を行った。NIRS(近赤外線分光法)装置と心電図を用いて、乳児刺激を視聴している場面、及び乳児へあやすように対乳児発話(IDS)を表出している場面の脳血流反応と心拍反応の測定を行った。また、IDSの音響的特徴及び言語学的特徴を分析した。 その結果、次のことが明らかとなった。(1)乳児の表情が啼泣時と非啼泣時では被験者の前頭前野において脳活動の違いがあり、乳児の啼泣時に脳血流量が有意に下がる傾向にある。(2)心理尺度の測定において不安傾向の強い被験者は、特に乳児の啼泣時に左下背側前頭前野の脳血流量が有意に減少する。(3)乳児に対する対乳児発話(IDS)の音響的特徴は、乳児が啼泣時に有意にピッチが高くなる。(4)IDSの平均発話長(MLU)と発話頻度は乳児の啼泣時に増大する。 これらの結果より、若年成人は乳児の機嫌状態によって生理・心理の両面において影響を受けることが示唆された。乳児の泣き声は子の状態を知るための重要な情報源であるが、子育て中の親にとって乳児の泣き声が最もストレスになることが指摘されている。次年度はさらに被験者数を増やして、性別や性格等、被験者の属性の違いによって乳児の啼泣から受ける影響に違いがあるかどうか検討をする計画である。本研究より得られた知見は、青年期における育児教育や、乳児の親の育児ストレス軽減のための基礎資料となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的におおむね順調に進展させることができた。また、実験結果の解析結果を踏まえ、研究成果を学術論文と学会発表によって発表した。学会では他の研究者とのディスカッションによって、多くの示唆を得ることができた。実験結果の解析は、生理学的データと心理学的データとの相関など、まだ着手できていない部分もあり、次年度も引き続き解析にあたる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、昨年度の実験結果のデータの解析を引き続き行い、研究成果をまとめる。また、被験者を拡大し、育児経験者を対象として、乳児の啼泣・非啼泣の非言語情報に対する生理学的反応を調査する。その実験結果を解析し、昨年度得られた育児未経験者のデータと比較検討をする。それらの比較検討を通して、育児経験により親性がどのように発達していくかを解明するための基礎資料を得ることが期待される。研究成果について、次年度は学術論文、国内学会の他に、国際会議でも発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験の被験者として予定していた方が都合で参加できなくなり、その分の謝金が残金として残った。 今年度の実験を継続して次年度も引き続き実施するため、今年度参加できなかった被験者の謝金として使用予定。
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Research Products
(14 results)