2012 Fiscal Year Research-status Report
子どもの心的表象能力を育てることば:その原点と役割機能の検証
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24530843
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
辻 弘美 大阪樟蔭女子大学, 心理学部, 教授 (80411453)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心の理論 |
Research Abstract |
本研究では、養育者の会話にみられる心的状態語は、自分や他者の内面を見えやすい形として表出し共有することを可能にし、その明示的な共有体験が心的表象形成を支えると仮定している。心的状態語を親子の会話で使用することは、子の心的表象能力の発達にどのような役割をはたしているかを、心的状態語を使用する養育者の精神的基盤と、子の心的表象能力発達における、心的状態語を含む会話の具体的な役割機能を明確にするため、次の研究を実施した。 心的状態を表す日本語データベースの構築では、心的状態を表す表現について、 子どもの発達段階と使用語彙頻度についての基礎データを得るために、2歳から6歳児の養育者に調査票を回答する形式でデータ収集を行い,これらの研究結果をPacific Early Childhood Education Research Associationの学会および、European Conference for Developmental Psychologyでの発表論文としてまとめ投稿した。 成人の心的状態語の語彙とその使用頻度に関する調査のために、女子大学生を対象に実施した予備調査を整理し、調査項目を精選した。これらを次年度の調査に加えて活用していく。 子ども向け絵本における心的状態語の頻度調査については、2歳から6歳児を対象として勧められている絵本リストをもとに、絵本で用いられている語彙をデータ化し、今後の分析に活用できる状態まで作業をすすめた。 Conference on the Processing of East Asian Languages2012、Annual Conference Pacific Early Childhood Education Research Association2012、国際幼児教育学会で、心的状態語と心の理論の関連研究の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心的状態を表す日本語データベースの構築において,子どもの発達段階と使用語彙頻度についての基礎データ収集を目的とした2歳から6歳児の養育者が回答する調査票では、予想以上数の幼児教育関連機関の反応があり、データベース構築には十分なデータを集めた大規模調査を実施することができた。また、これらの分析結果を成果として発表する準備も整い、Pacific Early Childhood Education Research Association2013の学会および、European Conference for Developmental Psychologyでの発表が決定している。また、Pacific Early Childhood Education Research Association2013では、シンポジウムにも招待され、これらの場を活用し、心的状態語に関連した研究を成果の発表と、教育実践の場での意識付けにつながる機会とすることが予定されている。 一方で、成人の心的状態語の語彙とその使用頻度に関する調査については、女子大学生を対象に実施済みの予備調査を整理し、調査項目を精選する時点まで準備が整った状態であり、本調査のデータ分析まで完了はしていない。 子ども向け絵本における心的状態語の頻度調査については、2歳から6歳を対象として勧められている絵本リストをもとに、各絵本で用いられている語彙をデータ化し、今後の分析に活用できる状態まで作業が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
養育者の社会的コミュニケーションスタイルと心的状態語の使用の関係性の検討では、養育者の社会的コミュニケーションスタイルと心的状態語の使用の関係性を検討するための実験を実施する。 心的状態語を用いたコミュニケーションが他者の心の理解発達を促進する効果の検討では、先行研究をもとに独自の「コミュニケーション・トレーニング」を開発し、保育の場においてコミュニケーショ ン・トレーニングを実施し、その効果を検討する。 心的状態語の役割機能についての提言にあたっては、子どもと関わる大人は、A)どの心的状態語を B) どのように子どもとのコミュニケーションで用いることが、子どもの心の発達に効果があるのか、C)養育者・保育者自身のどのような側面を意識して、子どもとのコミュニケーションに関わればよいのかについてまとめ、保育の現場で活用される形にして発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
子どもの心的状態語に関する大規模調査においては、2-3歳児のデータが他の年齢グループに比して若干少ないことから、サンプルの偏りを修正するために、次年度にこれらの年齢の子どもをもつ養育者への働きかけを行う必要があると考えている。よってこれらのために、翌年度に繰り越した研究費を活用する。加えて、翌年度請求の研究費では以下の計画を実施する。 平成25年度計画にある、養育者の社会的コミュニケーションスタイルと心的状態語の使用の関係性の検討では、養育者の社会的コミュニケーションスタイルと心的状態語の使用の関係性を検討するための実験を実施する。 ここでは、予備的な実験が幾つか終了しているが、これらの結果をもとに、本実験で用いる材料作成や、実験実施に関する補助、実験呈示のためのソフトウェア購入に研究費を用いる予定である。 研究成果発表としては、研究協力者である、山田千枝子氏および,戸井洋子氏とともにPacific Early Childhood Education Research Association2013の学会発表を予定している。学会発表のための旅費等に研究費を用いる。また、European Conference for Developmental Psychologyにおいても、大規模調査の結果を紹介するとともに、欧米との比較研究の可能性を探求するための学会発表のための旅費等に研究費を使用する。
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Research Products
(11 results)