2013 Fiscal Year Research-status Report
子どもの心的表象能力を育てることば:その原点と役割機能の検証
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24530843
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
辻 弘美 大阪樟蔭女子大学, 心理学部, 教授 (80411453)
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Keywords | 心の理論 / 表情認知 / 心的状態語 |
Research Abstract |
H25年度の研究では、養育者の社会的コミュニケーションスタイルと心的状態語の使用の関係性を検討するための実験を実施した。具体的には、「どのような社会的コミュニケーションスタイルをとる養育者が心的状態語をよく使用するか」の問いに答えるために、養育者および将来養育者になる成人女性を対象に、コミュニケーションスタイルの個人差として、表情の知覚的処理の敏感性、および主観的評定による共感性の視点から、その個人差を測定し、これらが心的状態語の使用頻度とどのように関係性しているかについて統計的な分析を行った。 また、H24年度から継続中の子どもの心的状態語の発達についての大規模調査データをもとに、子どもの心的状態語の発達モデルについて検討するとともに、子どもの心的状態語の発達に関する認識にかんする調査を実施し、心的状態語の使用に関するデータとともに、実際の発達との関連性について検討した。 これらの検討の結果、養育者のコミュニケーションスタイルと心的状態語の関連性について以下のことが明らかになった。1)子育て中の母親の表情の知覚的処理の敏感性は心的状態語のうち認知に関連する語の使用割合との関連が示され、表情変化に敏感な母親ほど、認知語を比較的頻繁に使用する傾向がある。2)成人女性(母親および女子大学生)の子どもの心的状態語の発達の認識は、男性の認識よりも(関連研究のデータを参照)実際の子どもの言語発達に近い。3)成人女性の心的状態語の使用頻度の調査から、子どもが早く獲得する心的状態語ほど、日常で成人女性によって頻繁に用いられている傾向がある。 これらの成果は、国内外の学術集会にて発表を行った。また、心の理論の発達に関連する研究について査読付き学術雑誌にて、掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度から継続している、子どもの心的状態語の発達については、データ収集および分析が完了し、学術向け、一般社会向けにそれぞれの発信の仕方を検討してきた。H27年度の計画にある、研究成果の公開の場で広く紹介することを目的に準備を今後も進めていく。 養育者の社会的コミュニケーションスタイルと心的状態語の使用の関係性を検討するための実験は、研究協力者の尽力もあり、スムーズにデータ収集から分析まで進めることができた、H26年度の国内外の学会発表も決定し、これらの場を通して、研究成果を発信していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、心的状態語を用いたコミュニケーションが他者の心の理論発達を促進する効果について検討することである。先行研究を活かしながら、独自の「コミュニケーション・トレーニング」プログラムを開発し、保育の場においてコミュニケーション・トレ-ニングを実施し、その効果を検討する。 具体的な進行日程やプログラム内容も、研究協力園と確認済みのところまで準備が進んでいる。このプログラムの検証を、2年間にわたって実施および改善していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が招待講演の形式で海外学会参加したことより、学会運営委員会が渡航費用および学会参加費を負担してくれたことから、海外旅費に余裕がでてきたことが主な理由である。 H26年度に実施するプログラムがH27年度までにわたり実施される可能性を予測し、当該プログラム実施の際に研究アルバイトを活用する計画がある。
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