2013 Fiscal Year Research-status Report
養育者の情動認知発達プログラムの開発-子どもの情動を読み取る能力の臨床的応用-
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24530847
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Research Institution | Okazaki Women's University |
Principal Investigator |
小原 倫子 岡崎女子大学, 子ども教育学部, 准教授 (10450032)
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Keywords | 情動認知発達 / 母子相互作用 / 臨床的応用 |
Research Abstract |
本研究は、養育者による「子どもの情動状態を読み取る能力(養育者による子どもの情動認知と認知する際に使用する手がかり)」のメカニズムと発達プロセスを社会的情報処理的観点からモデル化し、さらにこれらのモデルを臨床的に応用して、子どもの意図や情 動がわからないために育児不適応を生じている養育者に対して、適応的な関わり方を体験的にトレーニングするためのプログラムを開発することを目的としている。平成25年度の中心的な活動は ①養育者による情動認知を分類するためのカテゴリー(24年度作成)と、認知する際に使用する手がかりを分類するためのカテゴリー(24年度作成)を使用し、健常な子どもを持つ母親と発達障害の子どもを持つ母親の情動認知のプロセスのパターンの違いについて検証し、英語論文としてまとめ公刊した(岡崎女子短期大学紀要)。 ②子どもの意図や情動がわからないために育児不適応を生じている養育者に対して、適応的な関わり方を体験的にトレーニングするためのフィールドである、大学教育付属施設の「親と子どもの発達センター」利用者の実態調査を実施し、論文として公刊した(学術教育総合研究所所報)。臨床的応用を検証するための個別の面接及び観察データと併せて調査の妥当性を検証する際のデータとしていく。 ③大学が置かれている地域の子育て家庭の課題を把握し、本研究の目的との整合性を持たせていくことを目的として、愛知県三河地域の子育て家庭の状況及び需要に関する実態調査を実施し、論文として公刊した(地域活性化研究)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の達成度は、40%程度である。 現在、本研究の目的の1つである養育者による「子どもの情動状態を読み取る能力」のメカニズムと発達プロセスをモデル化するために必要な、カテゴリーの作成と論文の公刊を終えている。また、そのカテゴリーを使用した養育者の情動認知のパターンの比較研究においても論文の公刊を終えている。しかしながら、養育者による子どもの情動認知と認知する際に使用する手がかりの質的データの分析が遅れている。また分析方法についても、様々な手法を試行錯誤している段階である。さらに、その基礎的知見を臨床的に応用するためのデータ収集と応用実践も今後の課題である。達成度が遅れている理由としては、本研究の拠点となる大学付属施設「親と子どもの発達センター」が開設され、その事業を軌道に乗せる仕事に時間を多く必要としたため、本研究に対して、当初予定していたエフォートの20%が確保できなかったことが挙げられる。26年度は「親と子どもの発達センター」を拠点としたデータ収集も可能になることから、育児不適応を生じている養育者に対して、適応的な関わり方を体験的にトレーニングするためのプログラム開発に取り組んでいきたい
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の中心的活動は ①養育者による子どもの情動認知と認知する際に使用する手がかりの質的データの分析方法を決定し、具体的な分析をすすめ、養育者による「子どもの情動状態を読み取る能力」のメカニズムと発達プロセスをモデル化し、論文として公刊していく。 ②25年度に着手できなかった、実際の母子の相互作用場面の行動と、養育者による子どもの情動状態を読み取る能力との関連を検証するために、行動コーディングシステムPTS-113を使用した分析を行う予定である。また、そのデータを用いて、実際の母子の相互作用場面の行動と養育者による子 どもの情動状態を読み取る能力との関連を検証し、論文としてまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
養育者が子どもの情動を認知する際に使用する手がかりと、養育者の応答行動及び育児ストレスとの関連を検証する質的調査が、調査準備の遅れで次年度に先延ばしになったため 今年度発足した親と子どもの発達センターを利用して、質的調査を実施予定である。具体的には、①養育者が情動認知の際に使用する手がかりと、応答行動の関連がどのように変化していくのかというプロセスの特徴を、短期間、反復的なマイクロ的視点による研究デザインでできるだけ詳細に検証し、発達変化のプロセスモデルを精緻化する。さらに、養育者の育児ストレスの違いにより、情動認知と応答行動の発達プロセスに違いが生じるのかを検証する。また、②ビデオ刺激に対する養育者の情動認知及び認知する際に使用する手がかりの特徴と育児ストレスの関連を検討し、育児ストレスをアセスメントするシステムの構築に向けて、研究の企画立案を行う。
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