2012 Fiscal Year Research-status Report
若者自立支援にかかる地域援助体制の再編成に関する研究
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24530848
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
間宮 正幸 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70312329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村澤 和多里 札幌学院大学, 人文学部, 准教授 (80383090)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 韓国 / 過疎地域の若者支援 / 障害者自立支援法 |
Research Abstract |
平成24年度は国の内外で研究課題にかかる調査を行い、実践家・研究者と研究交流を深めた。 第1の成果は、本研究課題である「地域援助体制の再編成」という観点から、2007年以来研究交流をもつ韓国の農村部で若者(青少年)自立支援にかかる調査を行ったことである。我々は、わが国ではじめて制度的変革のもとに発展する韓国の青少年相談支援、学校安全統合システムの調査を行い成果を発表してきた。そうしたこれまでの蓄積のうえに平成24年8月には札幌市で光州広域市西部教育庁Weeセンター前室長を招いて韓国の新しい地域連携システムの報告を受けシンポジウムを行った。これには全国から多数の学校教育関係者が参加した。平成25年2月には、韓国の人口過疎地域(全羅南道宝城郡)において地域に根ざそうとする宝城郡教育庁Weeセンターおよび宝城女子中学校Weeクラスを訪問し両国の地域教育問題について議論した。また、韓国でもっとも地域連携体制が整う光州広域市において関係機関(インターネット中毒センター、児童保護対応専門機関、性暴力被害者相談センター、青少年非行予防センター)の実態調査を行った。 第2の成果は、人口過疎地域における若者支援にかかる実態調査を行ったことである。少子高齢化が進行する地域の実践として、北海道後志圏域相談支援協議会の活動、とくに、羊蹄山相談支援センターの場合、小樽市塩谷福祉会の就労支援、豊富町の地域活動センターと学校の連携、別海町および羽幌町のスクールカウンセラーと地域住民の連携の実態などを調査した。 第3の成果は、札幌学生職業センター、札幌市若者支援総合センター、とちぎ若者サポートステーションにおいて支援実践に直接かかわり就労・自立にかかる資料を得たことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
わが国の若者の自立の困難の背景は複合的であるが、東アジアの隣国である韓国の若者の教育・生活・労働の実態をあきらかにしながら比較研究することはかなり有効な方法であると確信するに至っている。社会的文化的な差異が若者の自立の問題に大いにかかわっているからである。わが国の若者の「ひきこもり」の現象は、基本的に韓国にはみられず、社会から引きこもっているかに見える韓国の若者の場合、それは、わが国の70万人に及ぶ「ひきこもり」の場合とは異なる。それらがようやくあきらかになってきた。 さらに、韓国では21世紀になって次々と新しい若者(青少年)支援施策が実現されてきておりそれらは国家プロジェクトになっている。研究代表者らの調査は、地域における機関連携の課題を検討するものであるが、この点においても、制度的改革をともなった韓国の発展がめざましい。わが国でこうした調査を行っているのは我々だけで、とくに、人口過疎地帯における専門職としての専門相談教師、臨床心理士、社会福祉士の連携などをあきらかにしたことは今後のわが国の実践に大きな影響を及ぼす可能性がある。 では、地方都市および過疎地域における若者自立支援の課題は何か。これを実態調査からあきらかにすることが我々の課題である。実際は、障害者自立支援法によるさまざまな手立てによって地域に根ざした対応が見られることがわかってきた。まさに、大きな制度的改革がないなかで地域で独自の工夫の実践が認められるということである。コミュニティが崩壊してきつつあるわが国の地方の人々の生活のなかで、高齢化社会と若者自立支援を合わせて考えていく実践(北海道豊富町など)が今後に示唆するところがおおきい。 本研究が一定の成果をあげていると自己評価するのは今後のわが国の実践に貢献するからである。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、韓国の青少年相談支援、学校安全統合システム、地域社会包括システムの実態調査を継続する。そして、実践家・研究者と議論を重ねて臨床の実際を保障している理論的な背景の詰めの作業を行う。ネット中毒対応などが焦点である。 支援者に関する研究も行いたい。韓国で青少年の地域支援を行う専門職種はいわば「憧れ」の職業になっている。アメリカやイギリスに留学する人もかなりの数に及ぶ。そういう研究意欲を保障するものは何かをあきらかにしたい。一方でわが国の相談支援者は、疲労と困惑のなかで実践を強いられている。また研修制度も貧弱である。この差異はなにゆえかをあきらかにしたい。実践家の養成プログラムに反映できるような実際の資料をえる。わが国の若者自立支援が「ひきこもり」を除いて考えられない以上、この問題を東アジアの子ども・若者の人格形成という観点から比較研究することも課題である。研究代表者らは、平成24年度に、日韓の大学生の対人的距離感に関する研究を行ったが、そうした基礎研究も継続する必要がある。おそらく、家族心理の比較研究、さらには、母子関係・父子関係の比較研究も思いの外重要な意味をもつことになるであろうと考えている。 第2に、国内のすぐれた自立支援活動を従来とは別の角度から調査したい。すなわち、地域資源の再活用という視点である。いったい誰が若者の支援者たりうるのか。臨床教育学などでは人間発達援助者にかかる研究という領域がある。この観点から、臨床心理学的な地域援助の担い手について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国との研究交流がオリジナリティをもつことが判明してきたので、交流・調査にかかる旅費、人件費がかなりの部分を占める。また、国内調査も計画しているので同様に旅費、人件費が必要になる。高額の設備品は予定していない。
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Research Products
(8 results)