2012 Fiscal Year Research-status Report
筆記表現法の応用可能性:退職勧奨者の再就職支援プログラムの開発
Project/Area Number |
24530857
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大森 美香 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (50312806)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 筆記表現法 |
Research Abstract |
筆記表現法(Expressive Writing)は、Pennebaker(1989)により開発された介入方法である。ストレスフルな出来事についての考えや感情を20~30分程度、数回にわたり筆記する方法で、身体的健康や情動愁訴の減少 (Greenberg et al., 1992; Pennebaker et al., 1990)、喘息患者やリューマチ性関節炎患者の症状の緩和 (Smyth et al., 1990)、対人関係の向上(Lepore et al)への効果が明らかにされている。 本研究は、予期せず退職勧奨を受けた者を対象とした再就職支援に対する筆記表現法の応用可能性を検証することを目的としている。我が国においても退職勧奨や大量リストラが一般的になり久しい。中高年の再就職支援の方法の確立は、個人の心身の健康および労働市場の安定のためにも重要な課題であるが、退職勧奨など予期しない失職に対応する心理的援助の方法はまだ確立されていない。以上の理由から、本研究では以下について明らかにすることを目的とした。1)筆記表現法が感情制御にどのような影響があるのか、2)筆記表現法が再就職支援にどのように活用できるのか、3)ネガティブな出来事の経験に対し、筆記表現法がどのような応用可能性があるのか。 平成24年度は、a) 退職勧奨の心理的健康との関連を明らかにするための調査準備、b) テキスト診断システムの応用可能性の検討、c) 筆記表現法に関する文献研究を行った。a), b) については、研究協力者ら(再就職支援の現場に関わる方々)と4回の研究会を行い、我が国の民間企業における退職勧奨および最新のテキスト診断システム応用の動向について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、予期せず退職勧奨を受けた者を対象とした再就職支援に対する筆記表現法の応用可能性を検証することを目的とし、具体的には次の2点をめざしている:(1)筆記表現法による感情表出がストレス過程に及ぼす影響を明 らかにすること、(2)心理的援助における筆記表現法の応用可能性を検討すること。 (1), (2) の達成に向け、平成24年度は筆記表現法の応用可能性についての文献研究、退職勧奨の心理的影響を測定するための調査材料の準備、筆記表現法の実施形態および筆記表現法の応用可能性を探索するための研究会を行ってきた。特に、研究会としては、人材開発に関わる民間企業や、システム開発に携わる民間企業、筆記表現法およびシステムとの統合についての討論を行い、共同研究のための関係構築が形成されたものと思われる。また、筆記表現法のパイロット研究をすすめた。 一方、退職勧奨を受けた個人を対象に筆記表現法を実際に応用するための課題も析出された。一般成人を対象とするため、属性を統制することが困難であること、プログラム参加のためのインセンティブの必要性、共同研究の民間企業における人事異動による担当者の交替である。 このように、文献研究や研究準備の点で一定の成果を収めたと思われるが、調査およびプログラム実施に際しての困難があり、上記のような評価にいたった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、筆記表現法が予期せず退職勧奨を受けた者の再就職支援に応用可能かどうか検討することを目的としている。平成24年度の予備的な研究から、直接の対象者に筆記表現法を応用するにあたっての課題も確認された。したがって、筆記表現法の応用可能性の探索のため、以下のことを行う: 1)大学新入生を対象とした筆記表現法の実査よりデータを収集し、その成果を発表する。また、筆記内容の分析方法について、テキストマイニングの応用可能性も探索する。 2)再就職支援の現場にあるキャリアカウンセラーらと共同し研究会を開催しながら(6回程度を予定)、退職勧奨を受けた者に対する再就職支援の問題点の探索を行う。これらの研究会をとおして、退職勧奨をうけた者に加えて、退職勧奨の事態は経験していない者で、再就職を検討している者に対する、筆記表現法の応用可能性を検討する。 3)国外で行われている実証研究および実践例についての資料収集を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、研究協力者の所属において人事異動があるなど、当初の計画どおりに調査研究を進めることができなかった。また、調査研究の実施にあたっては再就職支援のフィールドについての理解をさらに深めることが必要と思われ、実査にいたっていない。このことをふまえて、平成25年度は、筆記表現法およびテキスト診断システムの応用可能性の検討を行う。 ・大学生を対象とした実験的研究の実査、データ収集、データの分析、成果発表の準備を行う。そのための研究補助者を雇用する。また、データ分析のための、統計ソフトウェア(SPSS データマイニング)を購入する。 ・退職勧奨および再就職支援のフィールドについての理解を深めるため、専門家からの専門知識の提供を求める。 ・退職勧奨や成人の再就職支援のすすむ国外の実践例について情報収集を行う(European Health Psychology Societyへの出席を計画している)。
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[Journal Article] Emotion Skills as a Protective Factor for Risky Behaviors Among College Students2013
Author(s)
Rivers, S. E., Brackett, M. A., Omori, M., Sickler, C., Bertoli, M. C., & Salovey, P.
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Journal Title
Journal of College Student Development
Volume: 54
Pages: 172-183
DOI
Peer Reviewed
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