2013 Fiscal Year Research-status Report
筆記表現法の応用可能性:退職勧奨者の再就職支援プログラムの開発
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24530857
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大森 美香 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (50312806)
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Keywords | 筆記表現法 / 再就職支援 / 感情調整 / ストレス |
Research Abstract |
筆記表現法(Expressive Writing)は、Pennebaker(1989)により開発された介入方法である。ストレスフルな出来事についての考えや感情を20~30分程度、数回にわたり筆記する方法で、身体的健康や情動愁訴の減少、喘息患者やリューマチ性関節炎患者の症状の緩和、対人関係の向上への効果が明らかにされている。 本研究は、予期せず退職勧奨を受けた者を対象とした再就職支援のあり方や筆記表現法の応用可能性を検証することを目的として行われるものである。平成25年度は、a) 退職勧奨を受けた者のメンタルヘルスと再就職支援の実態についての文献研究およびフィールド調査、b) 筆記表現法の効果の検証および有効性の検討を行った。 a) 退職勧奨を受けた者のメンタルヘルスと再就職支援の実態についての文献研究およびフィールド調査:再就職支援を実施する事業会社の担当者と、4回にわたる勉強会を開催した。また、b) 筆記表現法の効果の検証として、大学新入生の適応に対する、筆記表現法の実証実験を行った。進学というライフイベントを経験した直後の、大学新入生24名を対象に筆記表現法を実施した。筆記表現法の効果性の測定とともに、現実世界の潜在的な利用者にどの程度浸透し効果が得られるかという有効性の考察を行った。文献研究と効果検証の研究結果の一部を、経済研究所のディスカッションペーパーとしてまとめた。なお、筆記表現法の実証実験については、平成25年度中に収集したデータが十分とはいえず、平成26年度にひきつづきデータ収集を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目的は、退職勧奨を受けた人々に対して、筆記表現法を実施することであった。わが国の退職勧奨および再就職事情について、関連する事業会社担当者と勉強会を進め、退職勧奨の実態について予備的な情報が共有できたこと、退職勧奨など非自発的失業を経験した人々の精神的健康の実態についての研究蓄積が不十分であることが明らかになった。 したがって、非自発的失業者の精神的健康や就職活動の規定因の検証が先決と考えられ、平成25年度はその文献研究と調査準備を行った。 さらに、本研究は、臨床心理学におけるメンタルヘルスの問題を人的資源という社会経済的文脈でとらえようとするものでもある。この観点から、筆記表現法の効果と有効性の検討を行うため、大学生を対象とした実験研究を行い、経済産業研究所のディスカッションペーパーとしてまとめ、掲載が確定された。 以上から、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
有効な再就職支援のためには、失業状態にある人々の就職活動の規定因を明らかにする必要がある。平成26年度は、非自発的失業状態にある人々のメンタルヘルスおよび就職活動に関する調査の実施を予定している。このデータの解析と結果のまとめを行い、国際会議において成果報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
退職勧奨に関連する再就職支援についての勉強会を行うにあたり、関係する事業会社と研究者の所属機関の間で守秘義務契約を結ぶ必要があった。手続きに想定以上の時間を要し、平成25年度の研究の執行に遅れが生じたため。 非自発的失業者を対象者とした調査を実施し、データを解析し、その成果をまとめ国際学会で発表を行う。
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