2014 Fiscal Year Research-status Report
知恵と社会的適応を育み心理・行動上の問題を予防する持続可能な心理教育に関する研究
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24530870
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
安藤 美華代 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60436673)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心理教育 / いじめ / 抑うつ / 不安 / 自己理解 / 他者理解 / 自己効力感 / 予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,小学生対象の実践では,学校で継続して実施している心理教育を家庭生活へつなげていくことを目的に,学校で実施した内容に基づいた保護者と一緒に取り組むホームワークを作成し,プロセス評価を行った。その結果,親子間のコミュニケーションが促進されたことが示唆された。中学生に対しては,学校教員が主体となり,実践を継続した。その結果,生徒の人間関係のトラブルの減少傾向,友達の話を最後まで聞く態度の向上が示された。 医療従事者を対象とした実践については,更に職種を広げ,多職種の新人を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”を行った。実施後のアンケート調査から,これまで同様に建設的な結果が示された。この結果を受けて当該年度は,キャリアアップを要請された中堅医療従事者を対象とした取り組みを開始した。プロセス評価を行った結果,自己理解や人間関係力向上の機会になったことが示唆された。 これまで実施して有効性が示唆されている中学生版・大学生版の内容を応用し,高校生を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”を実施した。実施前後に「日常生活調査」を行い統制群と比較検討した。その結果,実施群では,いじめの加害,被害の減少,問題行動の誘いを断る自己効力感の向上と問題行動の減少が有意に見られた。 また,特別支援学校高等部では,学校生活に困っている生徒への個別支援,比較的認知の高い生徒を対象としたグループ支援を引き続き実施した。実践を通して,いずれのアプローチにおいても,自己理解や他者との関係を含む適応の向上が,参加者のワークシート,教員の観察から見られている。 さらに,糖尿病をもつ人を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”では,改訂版を実施し,その意義について検討した。その結果,本取り組みは比較的少ない抵抗感で心理面に目を向けながら,負担感の緩和をもたらす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,平成16年から実施し,人々の心理・行動上の問題を予防し,心の健康や社会的適応を育むことが報告されている心理教育“サクセスフル・セルフ” (安藤, 2007等)を,小学1年生から成人前期まで対象者を広げ,発達段階に応じたプログラムの開発を行い,実証的・実践的研究を実施し,持続可能な取り組みにすることである。研究目的に沿って計画した平成26年度の研究内容は,関係者のご協力により,おおむね順調に進展した。平成26年度に得られた結果は,本研究課題の達成につながるものである。 取り組みが多年代層および多領域で実施されるようになってきたことから,各実践がよりよい取り組みとして持続し発展することを目指して,実践者同士が協議し合えるよう,平成24年度から年1回“サクセスフル・セルフ研究会”開催している。 小中学生を対象とした実践的研究については,これまでの結果を統合し,心理教育“サクセスフル・セルフ”の効果と適応,小学1年生から中学3年生まで9年間継続して実践可能なワークシートの作成を行い,学校教員のみならず学校教員を目指している大学生にも普及させることを目指して,岡山大学版教科書として,『児童生徒のいじめ・うつを予防する心理教育“サクセスフル・セルフ”第2版』を出版した。 多職種医療従事者を対象とした“サクセスフル・セルフ”については,平成26年度に新たに協力組織が増加したため,計画を変更し,追加でプロセス評価を行った。これらの結果も統合し,ワークブックを作成する予定である。 平成26年度に行った新任ならびに転入学校教員を対象とした“サクセスフル・セルフ(学校教員版)”のプロセス評価をまとめ,必要な改訂を行った上で,平成27年度の実施を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,多職種医療従事者向けの『“サクセスフル・セルフ”ワークブック チーム医療と人間関係力Up!』を作成する予定である。そして,作成したワークブックを使用した実践を行い,ワークブックの有用性について検討を行う予定である。 児童生徒を対象とした心理教育については,教科書として作成した『児童生徒のいじめ・うつを予防する心理教育“サクセスフル・セルフ”第2版』を,教員を目指す大学生向けの授業で活用し,その有用性について検討を行う予定である。 これら多領域での研究を円滑に推進するために,実践者や実践コーディネーターと綿密に連携をとり,実施への参観・観察,コンサルテーションを丁寧に行っていく。
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Causes of Carryover |
多職種新人医療従事者版については,平成26年度に新たに協力組織が増加したため,計画を変更し,追加でプロセス評価を行うこととしたため,未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため,平成26年度に実施した多職種医療従事者を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”に関するプロセス評価の結果も含め,これまでの結果と統合した分析を行い,それに基づく多職種新人医療従事者を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”のワークブックを作成することを次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい。 また,平成26年度に行ったプロセス評価の結果発表に充てることとしたい。
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Remarks |
岡山大学大学院教育学研究科 教育臨床心理学専攻 のホームページに,『第3回サクセスフル・セルフ研究会』の案内を掲示している(http://cobrains.jp/kyoikurinsho/2537/)。 岡山県内の小中特別支援学校,茨木県の中学校から,心理教育“サクセスフル・セルフ”の実践を行い,研究発表を行ったことが報告された。
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