2012 Fiscal Year Research-status Report
児童に対する抑うつ予防プログラムの効果と中学校進学後の維持効果の分析
Project/Area Number |
24530878
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
佐藤 正二 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (30107205)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 子どもの抑うつ予防 / 社会的スキル訓練 / 認知再構成法 / ユニバーサル予防 |
Research Abstract |
本年度は、小学校6年生を対象として、社会的スキル訓練と認知再構成法から構成された認知行動的なユニバーサルタイプの抑うつ予防プログラムの効果を検討した。介入群53名は、7時間にわたって、抑うつ予防プログラムをうけた。また、統制群105名は、プログラムには参加せず、プログラム実施前後のアセスメントのみに参加した。 結果は次の通りであった。(1)本プログラムで教えられた3つの社会的スキルのうち「断り方スキル」と「頼み方スキル」に有意な訓練効果が認められた。(2)認知再構成法の効果を明示する「認知の誤り」得点は、介入前から介入後にかけて有意に得点の減少がみられ、より好ましい認知的変化が生じていることが明らかになった。(3)同じく、認知的変容の指標とした自動思考も、介入の結果、ポジティブな自動思考(将来への期待)が増加し、ネガティブな自動思考(自己否定と絶望的思考)が有意に減少した。(4)抑うつ得点は、介入前の得点よりも、介入後の得点の方が有意に減少した。 以上の結果から、小学校から中学校の移行期にある小学6年生に対して実施された抑うつ予防プログラムは、児童の抑うつを低減することが確認された。このことから、本研究のプログラムの構成要素となっている社会的スキル訓練と認知再構成法は、抑うつ低減をめざすユニバーサルプログラムにおいて効果的な結果を生み出していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、小学校から中学校への移行期に当たる小学校6年生の児童に抑うつ予防プログラムを実施し、プログラムの効果を検証した。その結果、本研究で開発した抑うつ予防プログラムが、小学6年生の児童の抑うつ得点を有意に低減させることを明らかにした。この時点で、本プログラムの妥当性が確証されたといえるだろう。 本研究の主な目的は、小学校で実施された抑うつ予防プログラムのようなメンタルヘルス介入が、中学校入学後のメンタルヘルスの維持、向上に果たす役割を検討することであるので、まずは小学校の時点で予防プログラムが児童のメンタルヘルスの向上につながることを実証しておかなければならない。そのことが、本年度の研究によって、実証されたことから、まずは本研究の目的の1つあるいは前提が達成されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果を受けて、平成25年度では、抑うつ予防プログラムの維持効果を検証する。平成24年度に6年生であった児童が、中学校に入学し、6ヶ月程度が経過した時点で、再度、小学6年生の時点で実施されたアセスメントを再実施する。 このアセスメントの結果に基づいて、小学校の時に行われた抑うつ予防プログラムの効果が、中学校入学後まで維持されるのか、あるいは、小学校から中学校への移行によって消失してしまうのかを明らかにしたい。 もし、本プログラムが中学校において維持効果をもてば、プログラムの効果をさらに強固にするために、小学校4,5年生から継続的に実施できる継続型抑うつ予防プログラムの開発に取り組みたい。また、本プログラムが中学校において効果が持続しないことが明らかになれば、中学校において実施可能な抑うつ予防プログラムの開発に取り組みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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