2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530879
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中原 睦美 鹿児島大学, 臨床心理学研究科, 教授 (80336990)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 臨床心理学 / 語り / 更年期 / ロールシャッハ法 |
Research Abstract |
本研究は、女性の健やかな生涯発達への心理支援を目的に、語りの分析を通して更年期に特有の心理的葛藤を明らかにし、その心理支援のあり方を模索するものである。3年計画を立て、事例研究法により、更年期経験者、未経験者を対象に構造化面接による個別面接を行い、語りの分析をすること、及び心理査定を実施し、さらに平成22年度の調査研究に引き続き、一般成人及び大学生を対象とした更年期をめぐる質問紙を用いた再調査を行い、更年期をめぐる個別的葛藤や普遍的葛藤を明らかにし、心理支援の方向性や予防的観点を明らかにするものである。 平成24年度は、更年期体験者を対象に、自作の質問項目に沿って半構造化面接を実施するなかで更年期の葛藤や課題を明らかにし、あわせて質問紙及び投映法などの心理検査を用いて葛藤内容とパーソナリティ特性との関連を把握することを目的とした。これを実行するために、質問紙のNEO-ffi,クッパーマン更年期調査票、投映法としてロールシャッハ法図版、ストップウオッチなどを購入し、データ分析用にパソコン・プリンターを購入した。採択内定直後より、対象者募集に動き始め、6月には更年期に関する講演会を開き対象者を募った。しかし、予想以上に対象者確保には困難を期した。 経験者の対象者収集は困難なため、引き続き対象者を募る一方で、本研究は3年計画であることから、未経験者、経験中の対象者も同時に募り、インタビューを実施した。鹿児島、札幌、大分の3県にわたって募った結果、経験者9名、経験中5名、未経験者5名の対象者が得られた。いずれも3時間から4時間かけてインタビュー及び心理検査を実施し、滞りなくデータ収集ができている。経験者の結果を分析し、研究の視点を明確にするため、札幌学院大学教授田形修一先生に指導助言を受け、日本心理臨床学会発表に向けたエントリーを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
更年期に焦点を当て、更年期経験者を対象として募るという本年度当初の対象者確保については難航している。その意味では、対象者の人数確保という量的な側面からは、「やや遅れているという」評価になる。しかし、本研究は量的研究ではなく質的な語りの研究であり、また、話題にしづらい更年期障害という語りづらい内容であることからは、講演会等を実施しても「研究協力者としての対象者が募りづらい」ことが実証されたこと自体が、この更年期研究の難しさが明らかになったともいえる。 結果的に9名の更年期経験者を対に確保でき、いずれもインタビューから心理検査までを実施できたことは評価できると考える。調査実施においても、対象者一人につき、3時間から4時間という長時間にかかわらず、いずれも滞りなく実施できた。また、更年期経験者という研究対象者が募れない事態に遭遇したことで、代わりに未経験者、経験中の対象のインタビュー及び心理検査が実施した。このことで、本年度の目的であった経験者の更年期をめぐる葛藤を分析にあたって、経験者群の葛藤や更年期のとらえ方、語りの変化を理解する上で、他の群との比較をする際の視点を得ることができ、非常に有用なものとなった。また、質問紙法でのパーソナリティ特性も特徴が見られておらず「性格因子による」という先行研究との比較上、興味深い結果が得られている。ロールシャッハ法では、骨盤反応など、一般的には健常群では出現しない反応がほぼ全員に出ているなど興味深い結果が得られている。これらのことから、総合すると質的研究という側面からは、「おおむね順調に進展している」と評価できる。今後も更年期経験者の対象者を募集しながらも、むしろ、得られたデータをもとに語りの内容や心理検査の結果を分析の方法に比重を置いていくことが重要であることが確認できた。このような新しい方向性が見いだせたのは意義深いと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように、平成24年度から26年度にかけて対象者を更年期経験者・未経験者(経験中を含む)・非経験者と分散して募ることが困難であることが判明した。また、質的研究において、量的にあまりに多くの対象者を集めることは研究目的や分析視点が拡散する危険があるとの指摘も受けた。このことから、まず、平成25年度は平成24年度同様に、更年期経験者、経験中の者、未経験者の募集を継続する。並行して、当初の予定通り、前年度24年度分で得られた経験者群の結果分析を行う。まずは、経験者群の半構造化面接によるインタビュー結果をもとに、更年期に関する評価が症状の重症度にかかわらず肯定的であった点を中心に、語りの側面から検討を行う。とくに症状から解放されたからなのか、過去体験として取り込まれたからなのかなどの個人要因にも焦点を当て、肯定的認知につながった意味について検討を加え、日本心理臨床学会の発表を行う。次に、同じく、経験者群のロールシャッハの概要を分析し、さらに、ロールシャッハプロトコルに特徴が見られた1事例の分析を通して、更年期の語りの観点から詳細に分析し、学会発表を行う予定である。ここでは、他の心理検査の結果も加味して検討する予定である。これらを通して、更年期経験者に関する更年期の葛藤やそれを受容してきた要因に関してまとめを行う。さらに、次の分析対象として更年期経験中の対象者へのの調査を増やし、分析に着手する。この実現のためにも、経験中の対象者を募ることが必須であり、鹿児島県内の対象者募集に加え、昨年度、研究対象ルートができた札幌、大分などに働きかけ、調査研究を実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度分の実績を学会発表するために、備品購入及び学会出張旅費が計上される。また調査対象者を増やすために、調査研究への出張旅費及び対象者への謝金が計上される。内訳は以下の通りである。 モバイルパソコン:PC Panasonic CF-S10EYPDR(予定) 250000、プリンターインクカートリッジ3色:50000,プリンタードラム:35000、消耗品:50000(録音機器、ストップウオッチ(予備用)、ロールシャッハ図版、筆記用具ほか。学会発表旅費 日本心理臨床学会 (横浜)100000、本ロールシャッハ学会(京都)100000、学会発表用消耗品(:USB,ポスター作成用紙、他)30000、調査研究旅費( 大分及び札幌) 200000、調査協力謝金 単価 4500円×20人 90000、通信費等 25280 総計 930,280円
|