2012 Fiscal Year Research-status Report
インタラクテイブコンテンツを用いた幼児のPTSDと積み木崩しに関する研究
Project/Area Number |
24530885
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
足立 智昭 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (30184188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雄一 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (40359857)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
北村 喜文 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80294023)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 幼児 / ストレス / 積み木 / インタラクション / 唾液アミラーゼ / PTSD / 東日本大震災 |
Research Abstract |
1.研究目的:本年度は、加速度センサなどを内蔵した電子的積み木の作成と、その積み木を用いた幼児の積み木崩し行動の微視発生的分析を行うことを目的とした。 2.加速度センサなどを内蔵した電子的積み木の作成:本年度は、積み木が崩れる際の物理的現象と、積み木による子どもの構造物の作成過程を認識するため、加速度センサなどを内蔵し、赤外線LEDとフォトトランジスタを格子状に配置した積み木を試作し、動作確認を行った。しかし、幼児がこの電子的積み木を崩した時の衝撃により、内部電子装置に不具合が生ずることが分かった。その結果、この不具合の調整と、内部電子装置の軽量化に時間を要し、その完成は年度末となった。 3.幼児の積み木崩し行動のストレス軽減効果の検証:本来、前項で記した電子的積み木を用いて、幼児の積み木崩し行動を微視発生的に分析する予定であった。しかし、電子的積み木の作成が遅れたため、この分析は次年度に変更し、次年度の研究目的であった幼児の積み木崩し行動のストレス軽減効果の検証を行うこととした。2歳から4歳の20名の幼児を対象に、市販の木製積み木を使用し、積み木遊びの前後に唾液に含まれるアミラーゼの値の測定を行った。その結果、25分以上、積み木遊び(積み木崩しを必ず行う)を行った幼児は、例外なく、アミラーゼ値が減少した。一方、積み木遊びに飽きて、探索行動を始めるなど、積み木遊びが継続しなかった幼児は、例外なく、アミラーゼ値が上昇した。これらの結果から、積み木遊びのストレス軽減効果が実証された。また、この研究を通して、実験場面の構造化(子どもの緊張を和らげ、一方で子どもの探索行動を誘発しない程度の環境作り)、母親と子どもを対象とした教示の在り方など、一連の実験手続きの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施する上で、必須となる加速度センサなどを内蔵した電子的積み木の作成を行った。しかし、この作成にはいくつかの困難が生じ、その完成は年度末となった。その結果、当初予定していた「幼児の積み木崩し行動の微視発生的分析」は次年度の課題とし、次年度の研究課題であった「幼児の積み木崩し行動のストレス軽減効果の検証」を1年繰り上げて実施した。その結果、唾液アミラーゼをストレス軽減効果の指標とすることにより、ほぼこの研究目的を達成することができた。また、一連の実験手続きの検討を行うことが出来た。 したがって、年度当初の目的に変更が生じたが、全体の研究目的は順調に達していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.目的:情動行動としての幼児の積み木崩しの微視発生的分析。 2.方法:(1) 対象者 a) 実験群A:PTSDの症状を示す幼児約20名。年齢は、2歳児から5歳児、それぞれ5名程度。保育所、または研究代表者の大学の療育演習室で実験を行う。それぞれの対象者については、PTSDの症状や程度などを、保育士、保護者から聞き取る。 b) 実験群B:侵襲的で痛みを伴う治療を行っている口唇裂口蓋裂幼児約20名(年齢内訳は実験A群同様)。研究分担者の金高が診療を行っている東北大学大学病院新外来棟で実験を行う。この実験群を設ける理由は、津波・地震の再現とは無関係に、高いストレスを被った幼児が、情動行動としての積み木崩し行動を行うかどうかを検証するためである。それぞれの対象者については、治療の経過、痛みに対する耐性などを、医療者、保護者から聞き取る。c) 対照群 :実験群のようなストレス症状のない幼児約20名。年齢は、2歳児から5歳児、それぞれ5名程度。実験場所は、実験群Aと同様。 (2) 実験装置:a) 電子的積み木、研究分担者の北村、伊藤が開発した電子的積み木は、一つ一つがマイクロプロセッサを実装し、それぞれの積み木の重なり(接続)、傾き、加わる圧力、崩れる際の加速度などの情報を、リアルタイムでパソコンに出力する。 b) デジタルビデオカメラ、積み木遊びをする幼児の表情、動作、積み木の構造物を3台のビデオカメラで撮影する。 3.分析 積み木遊び、積み木崩しの行動を、電子的積み木からリアルタイムで出力される加速度、角速度、地磁気情報などに基づき分析する。分析にあたっては、対象者のPTSDの症状や治療ストレスなどの情報を加味し、定量的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。 1.物品費 350,000円:内訳 電子積み木情報解析装置(約18万円)、加速度センサ(約10万円)、積み木外壁素材(2万円)、プリンタインク(3万円)、他(2万円) 2.旅費 500,000円:学会発表旅費、海外:ヨーロッパ発達心理学会(約35万円)、国内:日本発達心理学会他(7万円)、共同研究者打ち合わせ旅費(約8万円:大阪―仙台2回) 3.謝金 200,000円:内訳 専門的知識の提供(約10万円)、実験補助(約10万円) 4.その他 50,000円:英文校閲費(約3万円)、通信費(約1万円)、他(1万円)
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Research Products
(9 results)