2012 Fiscal Year Research-status Report
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24530886
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
森 丈弓 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (00512154)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 犯罪 / 再犯 / リスクアセスメント / 生存時間解析 |
Research Abstract |
Hoge & Andrews(2002)の作成によるリスクアセスメントツールである、Youth Level of Service Inventoryを日本の少年保護法制の実情に合うように翻訳、修正したが、その際の使い勝手について検討するために、宇都宮少年鑑別所、新潟少年鑑別所に勤務する家庭裁判所調査官にツールを配布し、意見を聴取した。 調査項目である再犯に関連するリスク要因は、過去の犯罪経歴や保護観察の遵守事項違反等を調査するもの、両親が適切に躾をしているか、両親との間に良好な関係が形成されているかどうかを調査するもの、学校や職場での適応状態について調査するもの、不良仲間との接触がどの程度あるか、健全な(非行に走っていない)友達がどの程度いるかを調査するもの、覚せい剤、有機溶剤、アルコールといった薬物への依存の程度を調査するもの、学校や職場以外でどの程度健全な活動に従事しているかを調査するもの、衝動性、身体的及び言語的攻撃性、注意力の乏しさ等の行動傾向を調査するもの、反社会的人格パターンと呼ばれる犯罪に親和的、肯定的な態度や価値観、信念、合理化の程度、自身を犯罪者であるとする構え等である。これらの項目について、新たに釧路少年鑑別に収容された非行少年に対して調査を実施した。また、富山少年鑑別所に勤務する鑑別技官にも、調査を依頼した。 また、家庭裁判所に係属している在宅の非行少年のケースについて、調査を実施するため、京都家庭裁判所、福島家庭裁判所において、調査を行えないか打診した。現在、検討をしていただいているところである。 これまでに得られたデータについては、統計的な分析を進めており、非行少年の属性を入力すると、予想される再犯確率を算出できるツールを暫定的に作成した。この成果については、平成24年度の犯罪心理学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、Youth level of service inventoryの日本版への修正作業について、家庭裁判所調査官等に実際に実務に使用して貰い、非行臨床場面への適用可能性について意見を聴取したところ、現場でも使用に耐えるものであり、ケース理解に対する示唆を与えうるものであるという見解をいただいている。 本研究においては、犯罪を行った非行少年について直接面接ができえる立場にある機関、職員からの協力が必要不可欠であり、研究についての理解を得られるよう、働きかけを行いながら、調査を実施していかなければならない。今回、新たに釧路少年鑑別所での調査データを確保できたこと、富山少年鑑別所に対してのデータ調査について了解を得られたことから、進捗があったと評価できると考える。 また、ツールの非行臨床現場での使い勝手を評価するには、実際に現場で非行少年に対して面接、調査を実施しているものに試用してもらい、意見を得ることが重要となるが、この点について、宇都宮少年鑑別所、新潟少年鑑別所で家庭裁判所調査官にツールを配布し、実際の調査業務に使用してもらい、意見を聴取できたことは研究の進展に大きく寄与したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、さらなるデータの確保のための働きかけを行っていく。家庭裁判所の在宅事件についても、調査を実施したいと考えていることから、調査研究の説明、実施の要請を行っていきたいと考えている。なお、家庭裁判所に係属している在宅事件については、これまでも調査対象としたい旨を説明し、依頼活動を行ってきたものの、家庭裁判所からの許可がなかなか下りず、司法分野でのデータ収集の困難さを痛切に感じているところであり、同じく在宅事件を取り扱う法務省保護局、保護観察所への働きかけについても行っていきたいと考えている。 また、収集されたデータは、ある程度、分析可能なサンプルサイズが確保できてきており、予測再犯率の算出テーブルを作成するといった分析は前年度まで行ってきているが、今後は、暴力再犯と非暴力再犯の2つのイベントを同時に分析するモデルである、competing risk modelを用いた分析や、少年院における処遇効果を傾向スコアを用いて分析するといった取り組みを行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回、大学を転任したことで、転任先の大学においてデータ分析環境を新たに構築する必要が生じたため、パソコン、プリンターをデータ分析用に購入することとしたい。 また、データの確保のためには、家庭裁判所、少年鑑別所、保護観察所等の現場施設に赴いて説明を行っていく必要があることから、そうした施設所在地への出張旅費に研究費を当てることを計画している。
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Research Products
(1 results)