2014 Fiscal Year Annual Research Report
被虐待児のオルタナティブ・アタッチメント形成に関する発達臨床心理学的研究
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24530889
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
山口 創 桜美林大学, 心理・教育学系, 教授 (20288054)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 虐待 / 乳児院 / オキシトシン / 身体接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、6名の養育里親をしている方を対象に、被虐待児の養育を行う際の困難点や対処法などについてインタビューを行い質的分析を行った。分析の結果、困難点は「試し行動」、「攻撃的行動が多い」、「学校での対人関係のトラブル」などのカテゴリーに分類された。
さらに平成25年度に実施できなかった、乳児院での職員の身体接触を用いた介入を促すことによる、オキシトシンの分泌についての実験を行った。 方法:19人の乳児各々に対し、身体接触を30分間行う前後で対象の乳児と職員の両者の唾液を採取し、その中に含まれるオキシトシンの分泌量について比較を行った。 結果と考察:分析の結果、30分間の身体接触を行うことで、乳児の唾液中のオキシトシン濃度は有意に増加した(p<.05)。さらに唾液中コルチゾールの濃度については、身体接触の前後で有意に減少していた。さらに職員の唾液中のオキシトシン濃度についても、有意に増加していた(p<.05)。また職員の唾液中コルチゾールの濃度については、身体接触の前後で有意に減少していた。質問紙の結果から、職員のストレスが有意に低減したことも明らかになった。この結果から、身体接触を用いた介入は、施設入所児のオキシトシンの濃度を高め、職員との信頼関係を強める効果をもつことが明らかになった。また職員にもオキシトシンの増加が認められたことから、入所児との信頼関係や親密な関係が強まり、ストレス緩和効果が認められることがわかった。先行研究から、被虐待児の血清オキシトシンの濃度が健常児に比べて低いことが明らかになっているが、職員との身体接触の頻度を増やすことにより、それを高める効果があることがわかった。
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