2012 Fiscal Year Research-status Report
社会不安障害に対する日本の文化的特徴を組み入れた治療方法の検討
Project/Area Number |
24530890
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
毛利 伊吹 帝京大学, 文学部, 准教授 (20365919)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会不安障害 / 認知行動療法 / 対人恐怖症 / 社交不安障害 |
Research Abstract |
社会不安障害に対する認知行動療法の開発に向けて、他者の内的状態を推測する際に生じるバイアスに焦点をあてて研究を行っている。今年度は主として、他者や自己の内面に関する認知の内容について検討を行った。他者や自己の内面を表す言葉(例:相手の考え、私の気持ち)を文頭として、調査協力者である大学生には、その後に続けて思い浮かんだものを書くよう求めた。その結果得られた語について、テキストマイニングの手法を用いて分析したところ、他者の内面については、「尊重」「理解するための行動」「分からなさ」「興味」といった内容が多く認められ、自己の内面については、「理解されることへの欲求」「理解されるための行動」「自分があることの大切さ」「分からなさ」「興味」のような内容が中心となっていた。「(他者の内面の)尊重」という認知は、日本文化では、相手に気を使い配慮する心遣いが要請されてきた、というこれまでの指摘と一致しており、「他者への配慮」や「尊重」が対人状況における曖昧な目標となるがゆえに、自分がそれに失敗するという予想や解釈を採択して、社会不安を生じる可能性が推測された。また、「自己を理解されることへの欲求」とは、知的な理解にとどまらず、他者からの情緒的な理解や被受容を求める欲求を意味している可能性がある。被受容感ついては、これまでに抑うつへの影響が指摘されており、社会不安障害に伴う抑うつについて検討する際には、他者からの受容を考慮に入れることも重要であろう。この結果をもとに、自己や他者の内面に関する認知の程度を測定する尺度を作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、まず研究1において面接調査を行い、他者の内面に関する認知や対人状況での目標などについて尋ねることを予定していた。しかし研究1に先立って研究2を行い、予め他者の内面に関する認知を整理しておくことが、面接調査におけるプロトコルの作成の助けにもなると考え、研究の実施順序を一部見直した。そのことが、研究の若干の遅れにつながっている。また当初、研究補助を依頼する予定であった大学生が、当人達の事情(就職活動等)により、その依頼を引き受けられなくなったことも遅れの一因となった。 ただし、次の段階に向けての準備も進めており、研究全体としては進展している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項で述べたように、当初の計画では、研究1の次に行う予定であった研究2を先行して行っており、実施順序に変更があった。また研究2の結果を受けて、研究1では、データ収集の手段として面接調査を採用するのか、自由記述調査を実施することがより適当かを現在検討中である。いずれにせよ当初の目的通り、まずは社会不安に関するモデルの作成に向けて研究を進める予定である。研究の効率を上げるために研究補助員の確保が課題となっているが、これまでより募集の幅を広げて人材の確保に努めた結果、現在、見通しが得られている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項で述べたように、今年度は、研究補助員を確保することができなかったこと等から人件費や謝金が発生しなかった。今年度は、研究補助員を雇用してデータ入力を依頼し、そのための費用としても研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)