2013 Fiscal Year Research-status Report
社会不安障害に対する日本の文化的特徴を組み入れた治療方法の検討
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24530890
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
毛利 伊吹 帝京大学, 文学部, 准教授 (20365919)
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Keywords | 社会不安障害 / 認知行動療法 / 対人恐怖症 / 社交不安障害 |
Research Abstract |
昨年度の研究結果を踏まえて、他者や自己の気持ちや考え等に関する認知の因子構造を、大学生を対象として質問紙法により検討した。用いた項目は自己に関するものが26項目(例:私の気持ちをわかってほしい)、他者に関するものが23項目であった(例:相手の考えを尊重する)。また、社会不安の程度を測定する尺度として、FNE短縮版 (SFNE; 笹川ら, 2004))を用いた。 自己の内面と他者の内面に関する認知について、それぞれ因子分析を行ったところ、自己については3因子、他者については2因子を抽出した。各因子に属する項目の得点を合計して各因子の得点とし、それらとSFNE得点との相関係数を求めたところ、自己に関する因子Iと因子III、他者に関する因子Iと因子IIに有意な相関が認められた(順に .22, -.32, .53, .24). SFNEとの間に相関が認められた、他者に関する因子I(他者の理解と尊重)には、「人の考えを聞きたい」「相手のことを大切にしたい」といった項目が含まれており、他者のことを知って尊重する、という内容の因子であると考えられた。他者へ配慮することが、対人状況における曖昧な目標としてあらかじめ設定されており、その目標を自身が達成できているかどうかを意識することで自己への注目が高まり、その結果として不安が引き起こされるという点が、日本における社会不安の一つの特徴である可能性が考えられた。 さらに、「他者の理解と尊重」という認知の背後にある中核信念を探るため、大学生を対象として「普段、相手の気持ちや考えを尊重したり、思いやったりするのはなぜか」という問いに対して、自由記述による回答を求めた。類似する内容の回答をまとめて一つのカテゴリーとしたところ、「良好な人間関係を築くため」「人として当然のことだから」といった回答が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進行にあわせて適宜計画を見直しているため、用いる方法などにいくらか変更が生じている。しかし、当初から研究の中心に据えていた、「他者への配慮」という認知と対人不安については、両者の間の関係が示唆されつつある。現在は、この結果を踏まえて介入方法を考える段階となっており、おおむね当初の予定通りであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、「他者の理解と尊重」という認知と対人不安との関係が示唆されつつあるので、今年度は、この認知への変化を促すことが対人不安の軽減につながるかどうかを中心に検討する。現時点では、大学生を対象とすることを考えている。まず、対人状況における自身の状態へのセルフモニタリングを促し、対人状況においてどのような目的や課題を自身に課しているかを明確にさせ、その後、「他者の理解と尊重」という認知に関する問いに答えるようなワークを行いつつ、自身の認知を見直すことが、より幅広く柔軟な認知を持つことにつながるかどうか、そして社会不安の低減につながるかどうかを検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の参考となる適切な映像資料や、データ分析に必要なソフトの選択が遅れたため、次年度使用額が遅れた。 介入方法の検討の一助とするため、心理療法関係の書籍や映像による資料を入手する予定であり、ここに研究費をあてる。さらに、質的にデータを分析する際に、より有効なソフトを導入することや、これまでの研究成果を学会等で発表するための費用として用いることを考えている。
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Research Products
(2 results)