2013 Fiscal Year Research-status Report
自己への思いやりの態度を育成強化させる心理教育的介入法の開発
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24530891
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
鋤柄 のぞみ 日本医科大学, 医学部, 助教 (80614734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 俊明 日本医科大学, 医学部, 教授 (30339759)
石村 郁夫 東京成徳大学, その他部局等, 准教授 (60551679)
山口 正寛 東京成徳大学, その他部局等, 助教 (90583443)
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Keywords | 臨床心理学 / 自己への思いやり / 感情制御 / コンパッション・フォーカスト・アプローチ / 心理教育的介入法 / 大学生・大学院生 |
Research Abstract |
初年度に引き続き、自己への思いやり(Self-compassion)の態度を育成・強化する心理教育的介入プログラムの開発と有効性の実証に向けて、自己への思いやりを支える主要素の更なる検討とともに、自己への思いやりの態度育成の課題取り組みから得られる心理的効果について、一般大学生を対象に実証研究を行い諸学会にて発表した。 1.自己への思いやりに関連する個人特性として、恥感情、完璧主義認知、5因子性格特性の点から検討した結果、自己への思いやりを持てない人の特徴として、失敗やミスにとらわれやすい認知様式や、欠点や欠陥に劣等感を感じ、人間関係で引け目を感じやすく、委縮して混乱しやすく情緒不安定といった特徴が明らかになった。支援に工夫が必要となる対象者の性格特性と認知様式についての資料を得ることができた。 2.自己肯定課題(ほめ日記)を一定期間実施したときの効果について、完全主義認知、自動思考、心配性傾向の点から検討した結果、課題への取り組みによって自己への思いやりの態度が高められ、否定的自動思考が抑制されて肯定的自動思考が出現し、より高い目標を設置するようになることが示された。しかし心配性傾向は関連が見られなかった。 3.自己への思いやりの態度育成による効果が期待される感情制御について、否定的感情の受容困難さと反芻および抑うつとの関連を検討した結果、否定的感情の受容困難さが抑うつ気分に及ぼす影響が認められた。つまり、否定的感情の受容困難さに介入することが、反芻や抑うつの低減につながる可能性が示唆された。 以上、自己への思いやりの態度の育成・強化に介入する課題実施がもたらす諸効果や関連する変数が更に浮き彫りになったことで、本研究推進の意義とともに、臨床実践に向けて必要な基礎資料が得られたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般大学生・大学院生を対象にした質問紙調査や自己肯定課題の効果検討を通じて、研究1および2の精査を更に押し進め、自己への思いやりの態度を育成・強化する介入法に必要な主要素や影響因、生成条件、また、介入法の効果を実証することができた。これらにより、臨床実践および今後の研究に役立つ知見を得ることができたと考える。 一方で、研究1と2に基づき初年度末に作成した、本研究が目標とする心理教育的介入プログラムの叩き台(全8回からなるコンパッション・フォーカスト・アプローチ)を実践する「研究3:一般大学生を対象にした自己への思いやりの態度を育成する介入プログラムの試験運用」は、当初計画していた25年度内に終了することはできなかった。ただし、試行と改訂を重ねて完成に至っており、26年度年頭に研究3は実施される計画である。 同じく25年度の計画であった「研究4:大学生・大学院生の精神科受診動向の基礎資料の収集と感情調整機能の探索的検討」については、医療機関に通院中で主治医と本人の同意が得られた大学生・大学院生に質問紙調査を実施し、診療情報について収集する観察研究とともに、自己への思いやり尺度や感情調整尺度など簡便な内的指標に回答を求めた。これは、自己への思いやりの態度を育成・強化する介入プログラムを臨床群へ実施するための前段階にあたり、最終年度の目的である「研究5:自己への思いやりの態度を高める介入法の臨床的施行とアウトカム評価」のための基礎資料の獲得に至ったと考える。 本研究が目標とする介入プログラムの開発は慎重を期してやや遅れていて、年度内に研究3の実施は叶わなかったが、プログラム開発および臨床実践に必要な基礎資料の獲得と準備については成果を得ている。以上を達成度の理由と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度までかけて作成した介入プログラム(コンパッション・フォーカスト・アプローチ:全8回のエクササイズ)を使用し、「研究3:一般大学生を対象にした自己への思いやりの態度を育成する介入プログラムの試験運用」の実証の累積を急いで妥当性を高めるとともに、前年度の研究4に協力いただいた精神科受診の大学生・大学院生を対象にした介入プログラムの実施、すなわち「研究5:自己への思いやりの態度を高める介入法の臨床的施行とアウトカム評価」を推進する。研究3では、面接法、観察法、自己感情変数および感情体験を測定する変数についての質問紙尺度を用いて、プログラムの事前・事後・追跡評価(約1ヶ月後と3ヵ月後)を実施する。研究5では、同意を得られた対象者を介入群とWaiting List群へ無作為割り付けし、やはり事前・事後に簡便な指標を用いてプログラム実施結果の評価を行う。また、介入群には約1ヶ月後と3ヵ月後に追跡調査も行う。以上によって、自己への思いやりの態度を育成・強化させる心理教育的介入プログラムの開発、および有効性について成果を取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金の理由としては、前年度の研究に必要とした印刷費や資料分析のための協力者雇用、諸学会参加に係る費用、海外への渡航費などで、当初の予算以下で実施可能だったことによる残額である。 次年度の使用計画は以下の通りである。 1.物品費:関係書籍の追加収集と文房具類、印刷用紙の購入、など。2.旅費:諸学会参加のための交通費・宿泊費、また、本研究が主軸とするコンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)の研修受講およびトレーニング証明書受領のための渡航・宿泊費。3.人件費・謝金:研究に協力いただく被験者への謝礼(およそ40~80名予定)、資料整理やデータ入力および分析作業等の協力者への謝礼。4.その他:研究で用いる質問紙尺度、調査用紙、介入プログラムの印刷費、諸学会での研究発表と参加費用、委託費(論文翻訳等)など
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Effects of the Self-Affirmative Task For Self-Compassion on Automatic Thoughts, Perfectionism Cognition and Worry2013
Author(s)
Ishimura,Ikuo , Hatori,Kenji , Asano,Kenichi , Yamaguchi,Masahiro , Nomura,Tochiaki , Sukigara,Nozomi
Organizer
The 4th Asian Cognitive Behavior Therapy(CBT) Conference
Place of Presentation
TOKYO
Year and Date
20130823-20130824
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