2012 Fiscal Year Research-status Report
「司法臨床」の展開に関する実証的研究―弁護士と臨床心理士の協働をもとに―
Project/Area Number |
24530896
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
廣井 亮一 立命館大学, 文学部, 教授 (60324985)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 司法臨床 / 弁護士 / 臨床心理士 |
Research Abstract |
子どもと家族に関する問題解決のための「司法臨床」の方法-法と心理臨床の協働-を基盤として研究に取り組んだ。メインテーマである、弁護士と臨床心理士による実質的な協働体制による、わが国における子どもと家族に対する支援の実際について研究した。 その上で、臨床心理士を正規のスタッフとして位置づけ、弁護士と協働して、刑事・民事事件、少年・家事事件にアプローチしている法律事務所における、具体的内容・実績と事例をもとに、法と臨床による問題解決の効用と課題を検討した。従来、弁護士の活動に応じた、臨床心理士の部分的な関与は行われていたが、本格的な弁護士と臨床心理士との協働はわが国では初の試みであり、今後の活動に期待された。 それを踏まえた研究の展開として、地方裁判所における裁判員裁判での「情状鑑定」の実践例をもとに、法的枠組みにいかにして心理臨床的枠組みを導入することができるかについて研究を深めた。その結果、当事者主義的司法モデルをベースにした刑事司法への心理臨床的枠組みの導入の困難性が示され、今後、治療的司法モデルを展開させる必要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始以前から研究の基盤となる「司法臨床」の概念と方法論の積み重ねが十分になされていたため、具体的な展開として、弁護士と臨床心理士による協働の実際の活動についての調査をもとに、法と臨床による問題解決の効用と課題を検討することができた。 その研究成果は、主に2冊の単著と1冊の編著に著わすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
弁護士と臨床心理士との協働についての研究の展開として、地方裁判所における裁判員裁判での「情状鑑定」の実践例を積み重ね、刑事裁判の法的枠組みにいかにして心理臨床的枠組みを導入することができるかについて研究を推進する。当事者主義的司法モデルをベースにした刑事司法にいかにして心理臨床的枠組みを導入することができるかについて検討することは、わが国における治療的司法モデルの展開につながるものである。 また、広く「司法臨床」を展開するために、いじめや体罰が問題となっている学校において、弁護士による法的アプローチと臨床心理士によるアプローチによる、適切な解決を検討する。 さらに、隣接国である韓国や中国での「司法臨床」的活動の調査を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、大分市のおおいた市民総合法律事務所等、弁護士と臨床心理士の協働を実践している国内の法律事務所での調査費用。 韓国や中国など海外における「司法臨床」的活動の調査費用。 その他、研究者の招へい費用。
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