2014 Fiscal Year Research-status Report
「司法臨床」の展開に関する実証的研究―弁護士と臨床心理士の協働をもとに―
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24530896
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
廣井 亮一 立命館大学, 文学部, 教授 (60324985)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 司法臨床 / 弁護士 / 臨床心理士 / 非行 / 犯罪 / ストーカー問題 / 家庭裁判所 / 家裁調査官 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、24年度・25年度の「弁護士と臨床心理士の協働」についての研究実績を踏まえて、①現代の社会問題になっているストーカー問題に焦点をあてて、ストーカーへの対応や防止策を研究した。また、②問題解決型裁判所の我が国への展望と課題について、法と心理臨床の協働が制度的に保障されている我が国の家庭裁判所について、家裁調査官の活動を基にその現状を再考した。 ①ストーカー問題に焦点化した理由は、相次ぐストーカー殺人事件のたびに法の不備が指摘され、ストーカー規制法が強化されているが、未だに有効な解決につながっていない。ストーカーの特質を踏まえた、「法と臨床の協働」が実践されていないからである。 その点を具体的な問題の所在として、25年度にストーカー問題研究会を立ち上げてストーカへの対応や防止策を事例研究で検討している。研究結果は、業績に記載した論文の他、複数のメディアを通して発信した。 ②家庭裁判所は、少年非行や家族紛争の問題解決の目的のために、少年事件と家事事件の一連の手続に人間諸科学の専門家である家裁調査官を主要なスタッフとして位置付けている。非行や虐待など子どもと家族の問題解決のためには、法的機能と臨床的機能の両者-すなわち司法臨床の機能を必要とするからである。その意味において、家庭裁判所の構造と機能は、少年非行や家族紛争に限らず、ドラッグやDV、精神障害などに関する我が国の問題解決型裁判所として展開する可能性を示している。 ところが、昨今の家庭裁判所は刑事司法化、民事訴訟化の傾向が著しく、法と臨床の協働が適切に果たされていない。そこで、法と臨床を架橋する家裁調査官の活動を通して、家庭裁判所の現状を浮き彫りにしたうえで、我が国における問題解決型裁判所を実現するための課題と展望を検討した。研究結果については、業績に記載した編著の他、各研究会や学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年、25年を通して本件研究が予定通り達成され、さらに具体的に焦点化して研究を深めている。またそれが、著書、論文、発表等で具体的な成果になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の総まとめを、著書、研究会、学会を通して行う。 具体的には、法と臨床の協働による、犯罪・非行、虐待、DV、などへのアプローチを広く実践につなげるために、弁護士、臨床心理士との共著『心理的援助のための法と対応の手引き--家族・学校・職場を助ける基礎知識』(有斐閣)を出版する。ストーカー問題研究を継続して実施する。学会発表としては、27年9月の日本心理臨床学会で「加害者家族へのアプローチをめぐって」のシンポジウムを行う他、法と心理学会でも研究成果を発表する。
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Causes of Carryover |
平成25年度の研究実施状況報告書に記載したように、現在の社会問題となっているストーカー問題への法と臨床による解決策の研究のまとめと発表を平成26年度中に行う予定であったが、研究の発表会を数回にわたって詳細に行う必要が生じたため、計画を延長して発表会を行うことにしたため、未使用額が生じた。 また、司法臨床を広く展開するためめの研究成果物のひとつとして『心理援助のための法と対応の手引き』(有斐閣)を刊行するための予算に充当して27年度に使用するために未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以上の事情により、ストーカー問題の研究のまとめと発表会を次年度に行うことにした。また、新たな研究著書の刊行も行うこととし、未使用額はそれらの経費に充てることにしたい。
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