2012 Fiscal Year Research-status Report
認知行動療法プログラムの開発およびそのエビデンスの多次元的検証に関する探索的研究
Project/Area Number |
24530897
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
鶴田 英也 神戸女学院大学, 人間科学部, 准教授 (60346096)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉岡 津岐子 梅花女子大学, 心理こども学部, 教授 (20259401)
実光 由里子 梅花女子大学, 心理こども学部, 准教授 (30585740)
森本 美奈子 梅花女子大学, 心理こども学部, 准教授 (70388601)
岡本 智子 梅花女子大学, 心理こども学部, 講師 (70634632)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | CBT / プログラム / バウムテスト |
Research Abstract |
平成24年度は、まず、梅花女子大学付属心理・教育相談センター豊中本室において実施中のCBT(認知行動療法)プログラムの改良を行った。プログラムの実施は、研鑽を積んだCBT担当者が当たっており、月1回のミーティングで改良点を検討してきた。現行プログラムは、うつ症状を対象とした8回・16回の回数制限のあるプログラムである。このプログラムを基本とし、改良プログラムでは、回数制限付きで延長を可能にした。また、開始前に行っているオリエンテーション(心理教育、CBTとプログラムの説明)に、まとめの回を追加し、さらに終了3か月後にフォローアップも実施することとした。 また、質問紙と共にプレ‐ポストで実施しているバウムテストの分析も含めた事例検討会を2回(終結6事例)行い、一定の治療効果がみられることが明らかになった。 現在、多く用いられているCBTプログラムは、技法を重視する傾向が強い。統一されたプログラムであれば、担当セラピストによる効果の偏りは避けられるが、ときにそれは、クライエントに寄りそう心理療法の基本からはずれることも起こりうる。それを補うためには、クライエントの症状や状況に合わせて、セラピストの裁量で変更可能な部分も必要である。最長24回まで実施可能なプログラムに変更したことで、より良い治療関係の構築に寄与するものと思われる。 CBTは深い領域での満足をもたらすものではなく、比較的単純に構成された認識のパラダイムの中での功利を求めているのではないかという指摘があるが、バウムテストのプレ‐ポストテストで、変化がみられるデータも集まりつつある。本研究により認知行動療法のさらなる発展、バウムテストの新しい知見、ひいては社会への貢献が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は、第一に、梅花女子大学付属心理・教育相談センター豊中本室において実施中のCBTプログラム(うつ症状対象)を継続実施し、改良を加えること、実施の際には、質問紙以外にバウムテストも実施し多面的なエビデンスを収集することである。これが本研究の中核となる計画である。第2に、新たに、強迫性症状を呈するクライエントへのプログラムを開発すること。第3に、CBT担当者(現在13名)は、より良いプログラムの実施と改良に向けて、学会・研修へ参加し研鑽を積み、外部より講師およびスーパーヴァイザーを招くこと、申請者らとCBT担当者は、定期的なケースカンファレンス・検討会議を開催することであった。 CBTプログラムの改良については、計画以上に進展している。現行の回数制限8回・16回に加え、クライエントの状況に合わせてより柔軟に対応可能なパターン(8回・16回の組み合わせで最長24回とする)を設けた。また、フォローアップ時期を現行の1か月後から3か月後に変更した。これにより、より再発防止に貢献できるプログラムとなりつつある。バウムテストもプレ-ポストでもれなく実施している。第2の強迫性症状軽減プログラムであるが、開発途中であり、さらなる検討が必要である。 外部より招く講師およびスーパーヴァイザーは日程の調整がつかず、次年度に延期となったが、CBT担当者は、学会や研修会に積極的に参加しており、外部の事例報告会でも発表している。また、申請者らとCBT担当者の事例検討会、ケースカンファレンスも実施している。以上の内容から研究計画は、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、改良・開発したプログラムを実施し、臨床データを収集することを主な推進方策とする。現在、うつ症状に焦点を当てたプログラムは改良を加え実施中であるが、強迫症状を軽減するプログラム開発も今年度に改良したい。また、現在、質問紙データとしてはCES-Dを使用しているが、CES-Dはうつ状態の程度を測る質問紙として優れているが、他の症状をみるには不足している部分もある。CBTは、うつ症状の軽減やセルフコントロールできるように支援することを目的としている。それによって、クライエントの生活の質の向上や自身への肯定的感情が高まれば、より再発防止につながるだろう。そのことを測る臨床データとして、実施前後で質問紙を追加したいと考える。すでに選定作業に入っており、決定し次第導入の予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、臨床データ収集を担うCBTスタッフの技術の向上と学会発表に関連する費用として主に使用する計画である。具体的には、申請者およびCBT担当者の学会・研修参加、心理テストや書籍購入、勉強会・事例検討会に関する費用、外部より講師およびスーパーヴァイザーを招く費用に充てる。また、設備の面では、スキャナー、パソコン、プロジェクター等の補充が必要である。研究を遂行する上での課題は、CBT実施ケースの確保である。CBT実施場所である梅花女子大学付属心理・教育相談センターでは、近隣のクリニックに案内を送付しており、CBTを希望するクライエントに実施している。うつ症状や強迫傾向のあるクライエントでも、本人からCBTの希望がなければ、インテーク担当者からCBTを勧めることはしていない。今後は、インテーク時にCBTプログラムの案内も行い、より多くの臨床データを収集することに努めたい。
|