2012 Fiscal Year Research-status Report
がん患者に対するアートセラピーの効果とプログラム開発に関する研究
Project/Area Number |
24530901
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | St. Mary's College |
Principal Investigator |
安藤 満代 聖マリア学院大学, 看護学部, 教授 (10284457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 佐陽子 沖縄女子短期大学, その他部局等, 講師 (50446209)
椎原 康史 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (80178847)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アートセラピー / がん患者 |
Research Abstract |
研究の成果:研究1において、血液疾患をもつがん患者を対象としてアートセラピーを実施し、気分とスピリチュアリティに効果がみられるかを調べた。患者は、色鉛筆やパステルで絵を描いたり、コラージュなどをした。その結果、気分の「抑うつ感」を「疲労感」が軽減する傾向がみられ、スピリチュアリティは変化がみられなかった。アート作成後の患者の感想から、感情や今後の希望などが語られた。さらに研究2において、健康な成人を対象として、アートセラピーを実施した。その結果、気分に肯定的な効果がみられていた。全体の計画では、昨年度の研究の継続として、対象の数を増やして実施することを予定している。さらに、新たに、「マインドフルネスアートセラピー」をがん患者に実施し、がん患者の心理面に肯定的な効果がみられるかを調べるとともに、健康な成人を対象として効果がみられるのかを調べる。 研究期間全体を通じて実施した研究の概要について:本研究は4年間の計画で、昨年度は1年目であり、アートセラピーが臨床で実施できるのかという実施可能性を含めて、基礎的なデータを収集した。 研究の意義や重要性:日本人の死因の首位を占めるがんは、医療の発展によって慢性な療養期間を要するようになった。すなわち、「がんとともに日常生活を送る」ことになる。そのため、患者を支えるためには、がん患者の生活の質(QOL)を維持したり、向上するための心理面のサポートは極めて重要なものである。また、アートセラピーの特徴的な面は、「言語を介さないでも実施できる」点である。患者は複雑な心情を経験するが、その心情はアート作成とともに表現でき、非言語的表現と言語的表現の両方を駆使して、患者への心理面のサポートができるため、そのプログラム開発はより多くの患者が享受できる機会が増えるために、極めて意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の予定では、「がん患者と健康な成人に対してアートセラピーの実施可能性を探る」ということであった。がん患者については、血液がんの患者を7名を対象としてアートセラピーを実施し、気分の改善に効果があることが明らかになった。この結果は、国際学会で発表するとともに、国際的学術誌に掲載された。健康な成人に対しても、アートセラピーを実施し、その効果があることがわかった。がん患者の結果は、国際学会で発表するとともに、国際誌に掲載されたこと、しかし、がん患者では対象数が少なかったことと、健康な成人の結果は、今から学会発表する準備であることを考え合わせると、おおむね順調に進展していると考えられる。がん患者のデータを増やすためには、他の大学病院との共同研究の一部として、現在進行しているので、さらにその効果を検証できると考えられる。また、健康な成人を対象とした研究では、今後、学会発表や雑誌投稿に向けての準備をする予定である。 また当該年度には、生理学的データをとるための機器を購入して、それらの操作に慣れる予定であったが、購入した機器メーカのソフトダウンロードに誤りがあることがわかり、これについてはメーカからの回答や修正を待っている段階である。できるだけ早く機器を返却してもらい、機器操作に慣れる必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、がん患者を対象としたアートセラピーについては岡山大学病院において、「がん患者のQOLへの効果」、「スピリチュアリティへの効果」、「不安や抑うつ感への効果」を検証し、結果をまとめる予定である。新しい研究として、「マインドフルネスアートセラピー」を、がん患者と健康な人を対象として、「気分の改善」や「スピリチュアリティ」に効果があるかを調べていく予定である。岡山大学病院で実施している結果については、安藤研究室でデータ解析した後、岡山で協力者等と会合を持ち、「適切な実施方法」や「病期と期待される効果」などを話し合い、次の研究(無作為化比較試験)の可能性を検討する。マインドフルネスアートセラピーについては、福岡の内藤病院ではがん患者に実施し、沖縄女子短期大学では、健康な学生を対象としてマインドフルネスアートセラピーの効果を調べる。また、適切な方法がどのようなものであるかを話合う。 また来年度に行う予定の、生理学的データを収集するための機器のテスト等を実施する。現在、機器の一部がメーカ預かりになっているので、できるだけ早く返却してもらい、テストを行い、次年度に備える。 これらの並行して、学会で結果を発表するとともに、すでに得ているデータをまとめて学術誌などに投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度、アートセラピーに関連する最新の知識や情報を収集するために図書購入や文献収集のための費用が要である。計画としては5万円を予定している。 そして、マインドフルネスアートセラピーを実施するためには、それに関連するパステルや画用紙等の文具が必要であるので、「用具代」が必要である。さらに、セラピーの効果を測定するために心理検査用具が必要であるので、「心理検査用紙の購入代」が必要である。これらのセラピーの結果は、USBメモリーやCD-R等の記録媒体に記録し、研究者間でも記録媒体の費用が必要となる。これらをあわせて30万円が必要であると予定している。 昨年度の結果を学会で発表し、また最新の知識を得るために、国内での学会を予定している。これには、安藤と伊藤の2名分として10万円を予定している。 さらに、また、研究を円滑に実施し、データ整理するために研究補助員が必要であるので、30万円が必要であると毛予定している。
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Research Products
(18 results)