2013 Fiscal Year Research-status Report
がん患者に対するアートセラピーの効果とプログラム開発に関する研究
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24530901
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Research Institution | St. Mary's College |
Principal Investigator |
安藤 満代 聖マリア学院大学, 看護学部, 教授 (10284457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 佐陽子 沖縄女子短期大学, その他部局等, 講師 (50446209)
椎原 康史 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (80178847)
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Keywords | アートセラピー / マインドフルネス / がん患者 / 気分 / 疲労感 / 活力 |
Research Abstract |
昨年度はアートセラピーのみを行った。そこで今年度は、マインドフルネス・アートセラピーのプログラムを実際に対象者に行い、その効果を知ることが目的であった。研究者間で協議して最初にプログラムの原型を作成して、大学生とがん患者に実施した。大学生では、アートセラピーのみの群とマインドフルネス・アートセラピーの群に分け、2週間の間をあけて2回実施した。その前後に気分プロフィール尺度のPOMSで変化の測定を行った。その結果、マインドフルネス・アートセラピー群では、緊張-不安、抑うつ感、疲労感が有意に低下し、活力が有意に上昇した。一方、アートセラピーのみの群では、緊張-不安と疲労は有意に低下したものの、抑うつ感や活力には変化はみられなかった。これらの結果は、アートセラピーのみよりも、マインドフルネス・アートセラピーの方がより、気分を改善することに有効であることが示唆された。この結果は、健康心理学会で発表し、Healthという雑誌に受理された。がん患者を対象とした研究では、10名のがん患者にマインドフルネス・アートセラピーを実施した。マインドフルネスの内容は、健康な大学生では座位や立位での姿勢で行う内容であり、がん患者は体力を考えて臥床して行う内容を用意した。大学生と同様に2週間をあけて2回実施し、介入前後にPOMSで気分の変化を調べた。その結果、緊張-不安、抑うつ感、混乱には低い程度の効果量がみられ、活力や疲労感には中程度の効果量が得られた。この結果は、がん患者の疲労感の回復と活力の向上に効果があることが示唆し、がん患者のQOL(生活の質)を高めることに寄与する意義深い結果だと考えられる。この成果は、看護の国際学会(International Nursing Conference & World Academy of Nursing Science)で発表し、現在、雑誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学生を対象とした調査は、2群の割付としては無作為化が望ましいが、現状としては学生の都合などがあり、無作為化はできなかった。しかし、マインドフルネス・アートセラピー群は、アート・セラピーのみの群よりも気分の改善がみられるという仮説のとおりの結果が得られたことは順調と考えられる。さらにがん患者においては、つらい闘病生活のなかでも、本プログラムを実施することができたことは、このプログラムの実施可能性を示すものといえる。さらに結果として、疲労感の低下と活力の向上に中程度の効果がみられたことは、他の研究からまだあまり示されていないので、本結果は重要であると考えられる。ただし、現在、この結果は雑誌に投稿中であるので、受理されることが望ましいと考える。まとめとして、大学生とがん患者に実施して、結果が得られたことは順調と考えられるが、論文の受理がまだであることを考え、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の第1の目的はマインドフルネス・アートセラピーの効果に関するエビデンスを生理学的手法によって収集することである。健康な大学生とがん患者を対象として、体温や血圧等を調べ、介入前後での変化を調べる。第2の目的は、プログラムの内容について共同研究者と話し合い、最初に作成した原型からの微調整を行い、プログラムの完成を目指す。第3の目的は、昨年共同研究者がマインドフルネスの内容の効果に関する調査を行っているので、その結果をカウンセリング学会で発表するとともに、国内の雑誌に投稿することを目指す。生理学的データの収集に関しては、今回予定しているものの他に、さらに研究を広げるために、他大学が備えている精度の高い機器を使用してのデータ収集も考えられ、臨床と実験室をつないだ研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マインドフルネス・アートセラピーにおけるマインドフルネスを実施するためのCD作成やDVD作成を予定していた。その際、健康な方にも使えるヴァージョンは完成したが、がん患者がベッドでできるバージョンの作成に時間を要し、次年度することになった。また、参加できる患者の数も限られ、目標人数に達するまでに時間を要したので、学会参加や論文作成に時間を要し、次年度することになった。 今年度は、がん患者が使用できるバージョンの作成をスピードを挙げて行う予定であり、予算を必要とする。さらに、昨年度、発表できていなかった部分についても学会発表を行ったり、情報交換する予定であり、そこで予算を使用する計画である。
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Research Products
(25 results)