2013 Fiscal Year Research-status Report
顕在的セルフ・アウェアネスの段階的分化とその変容過程の行動的解明
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24530907
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細川 徹 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60091740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 恵太 高知大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (50582475)
西田 充潔 北星学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (70326536)
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Keywords | セルフ・アウェアネス / 発達 / 自閉症 |
Research Abstract |
本年度は、研究の第1の目的である「顕在的セルフ・アウェアネスの3水準(同一視、永続的、外的)のうち最高水準である外的水準を多元的・複合的な概念として捉え直し、それに対応する課題を新たに開発してRochatモデルを検証」すること、及び、第2の目的である「高機能自閉症児は顕在的セルフ・アウェアネスの分化過程で、外的水準の達成が著しく遅れるか変容しているという仮説を検証」することの両者において着実な成果をあげることができた。 1.外的水準に対応する課題として「ピクニック課題」(ピクニックに行く「ごっこ遊び」において被験児がラベルを介して与えられた役割とそれを遂行する自分を同一視できるかを試すもの)を作成した。対象は2~6歳までの定型発達幼児35名で、課題通過の割合は、2~3歳群0%、4歳群50%、5歳群83%、6歳群78%であった。3歳と4歳の間に課題成績の大きな変化がみられたことから、外的水準の獲得時期は4歳前後と推定された。 2.高機能自閉症児の顕在的セルフ・アウェアネスの発達様相を明らかにするため、幼児期・学童期から思春期・青年期までの連続的分化を捉える手法として、課題解決に伴う情動反応を同時的に測定できる研究手法が妥当であることを明らかにした。 3.新たに開発した「すごろく課題」において、他者が行為者となる条件(他者条件)と自己が行為者となる条件(自己条件)での成績の違いを定型発達児14名と自閉症児16名(いずれも平均9歳)で比較した結果、両群とも他者条件での正答率(因果関係を正しく理解)は100%であったが、自己条件では自閉症児の成績は定型発達児に比べて有意に低く、自閉症児は自己が行為者となる場合の因果関係を誤って理解する傾向があるといえる。このことは、自己の行動を客観的にみることが難しい、すなわち、セルフ・アウェアネスが外的水準に到達していないことを1つの表れと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顕在性セルフ・アウェアネスの発達的変化について、水準1~水準3まで順を追って検証してきたが、前年度は水準3(外的水準)の課題作成が遅れたために「やや遅れている」と評価したが、本年度は「研究実績の概要」で述べたように、課題作成から定型発達児を対象とした検証まで研究が進展した。次年度(最終年度)に高機能自閉症児を対象とした検証を行うことで、第1の目的は達成できる。加えて、新たな研究分担者の参加により、青年期の高機能自閉症者でセルフ・アウェアネスの外的水準がどのような状態にあるかを調べる方法を確立した。 第2の目的については、「研究実績の概要」で述べたように、研究はおおむね順調に進み、当初の狙いはほぼ達成されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究の最終年度にあたり、これまでに作成した実験課題による顕在性セルフ・アウェアネスの発達的変化を体系的に明らかにする研究の総仕上げを行う。そのため、高機能自閉症児の初期的な外的水準達成年齢を検証し、さらに、その変容としての思春期・青年期の外的水準の様相を明らかにする。これをもって、データ収集と分析を終わり、研究のまとめと研究成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担研究者の一人(西田充潔)が、青年期自閉症者の顕在性セルフ・アウェアネスの外的水準を測定する課題を作成したが、実施までには至らず、被験者への謝金が不要になったためである。 次年度当該研究分担者において、青年期自閉症者の顕在性セルフ・アウェアネスの外的水準を測定する課題を実施し、平成26年度分請求額とあわせ被験者への謝金として執行する予定である。
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Research Products
(5 results)