2014 Fiscal Year Research-status Report
無意図的な思考・想起の生起メカニズムおよびそのメタ認知に関する実験的検討
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24530911
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
関口 貴裕 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90334458)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 無意図的想起 / マインドワンダリング / 不随意記憶 / メタ認知 / モニタリング / ワーキングメモリ / 実行機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,以下の3つの検討を行った。 1.無意図的思考の生起に関わる認知能力の検討:無意図的思考がいかなる仕組みを通じて意識に広がるかを明らかにするために,音韻的短期記憶,視覚的短期記憶の働きに注目し,それぞれの関与を二重課題法で検討した。その結果,音韻的短期記憶に負荷をかける課題の最中には,統制条件課題に比べ無意図的思考の生起頻度が低下するが,視覚的短期記憶に負荷をかける課題では無意図的思考の生起頻度が低下しないことが分かった。この結果から,無意図的思考が音韻的短期記憶の働きを通じて意識に広がることが示された。 2.無意図的思考と創造的問題解決の関係の検討:無意図的思考がもつポジティブな機能に関しBaird et al(2012)は,創造的問題解決の促進を示している。しかしながら,先行研究では創造的問題解決の課題として拡散的思考課題のみが用いられていたため,無意図的思考がもう一つの問題解決形式である収束的思考も促進するかは明らかでない。そこで収束的思考の課題として遠隔連想テストを用い,無意図的思考を多く生起する課題を行うことで,以前に解けなかった問題を解くことができるようになるかを検討した。その結果,テスト前の無意図的思考の生起頻度は遠隔連想テストの成績に影響しないことが示された。この結果から,無意図的思考が促進するのは拡散的思考のみであり,収束的思考には影響しないことが示唆された。 3.自伝的記憶の無意図的想起の特徴の検討:過去の出来事の無意図的想起がどのような状況,どのような刺激で起こりやすいかを雨宮・関口(2006)の方法で検討した。その結果,1)現在の自己に注意を向けることで無意図的想起が起こりやすくなること,2)頻度の低い出来事を表す単語(例:葬式)を想起手がかりとした場合,無意図的想起と意図的想起とで特定性が高い出来事が同程度に想起されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画にあった研究のうち,「無意図的思考の気づきをもたらすメタ認知機構の検討」については昨年度(平成25年度)までに完了し,外的刺激による受動的モニタリングの仕組みについてこれまでにない知見を得ることができた。この研究はすでに論文化し,学会誌に投稿中である。 また,「無意図的思考の生起に関わる認知能力の検討」については,本年度(平成26年度)集中的に検討を行い, 5つの実験を通じて,無意図的思考が音韻的短期記憶の働きを通じて意識に広がることを示すことができた。この研究についても現在,論文を執筆中である。本年度はこれに加え,無意図的思考と創造的問題解決の関係に関する知見も得ることができ,比較的順調に研究が進んでいるが,一方で昨年度の研究成果をうけて実施予定であった無意図的思考傾向とワーキングメモリ能力との関係については未着手であった。そこで研究期間を1年延長し,ワーキングメモリ能力と無意図的思考の関係を個人差アプローチで明らかにする研究を次年度に実施する。 また,3つめの研究である「無意図的想起の生起メカニズムに関する検討」は,本年度,それが自己概念の活性化と関係することを示唆する知見を得ることができたが,また予備的な検討の段階であり,次年度にこれをより厳密な手続きで検証する。 以上より,平成26年度の研究は「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までの研究成果を踏まえ,平成27年度は以下の研究を行い,無意図的思考・想起の生起メカニズムの仕組みを明らかにする。 1.無意図的思考の生起に関わる認知能力の検討: 無意図的思考の生起とワーキングメモリ能力との関係について詳細な検討を行う。具体的には,ワーキングメモリ能力の高低と課題負荷の程度が無意図的思考生起のタイムコースにどのような影響を与えるかを個人差アプローチで検討する。これによりワーキングメモリ能力が無意図的思考の生起で果たす役割を明らかにする。 2.無意図的想起の生起メカニズムの検討: 昨年度の研究において,「現在の自己」に注意を向けることで無意図的想起が起こりにくくなることが見いだした。そこで本年度は,自己概念と無意図的想起の関係をより明確にするために,現在の自己に加え,過去の自己に注意を向ける条件を設け,さらに想起を誘発する出来事の時期を独立変数に加えることで,自己概念の活性化がどのように無意図的想起に影響するかを実験的に検証する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた「無意図的思考とワーキングメモリ能力の関係に関する個人差アプローチによる検討」および「無意図的想起の生起メカニズムの検討」を完了することが出来なかったため,平成27年度に補助事業期間の延長申請をした。これにより,同研究の謝金・消耗品購入・成果公開費として使用予定であった330,000円を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,残された研究課題の実施に約150,000円(主に参加者謝金,消耗品購入),研究成果の公開に180,000円(学会発表旅費:120,000円,論文校閲費:約60,000円)を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)