2013 Fiscal Year Research-status Report
音声による感情表現が動機づけに与える影響:脳マルチモーダル測定による検討
Project/Area Number |
24530912
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大上 淑美 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (30456264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 泰則 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (40240759)
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Keywords | 生理心理 |
Research Abstract |
一年目は、脳波とfMRIを用いた生理指標測定のための課題プログラムをE-Prime(心理実験用刺激呈示ソフト)を用いて作成した。課題は、時間評価課題(あらかじめ指定した数秒程度の時間を頭の中で数え、その指定された時間が経過したと思ったらボタン押しを行い、その後に時間評価が合っていたか間違っていたかを提示する)を用いている。この課題では、正誤(フィードバック情報の操作)の表示(どような刺激での呈示)により、異なる実験条件を作り出すことが可能である。本研究では、聴覚刺激にて正誤の表現を行いたいと考え、実際に声優の方に協力してもらい、感情を込めた音声刺激の作成を行った。その他必要な聴覚刺激条件も設定し、課題設定を確かめるための予備実験を行った。 二年目は、脳波とfMRIによる脳活動のデータを測定するため、被験者を募って、本格的に脳波実験から開始した。昨年度に作成した課題を実際の実験で用いたところ、設定に不備の点が判明したことから実験を一旦中止して、実験課題内の刺激の区別がつきにくかったため課題に用いた聴覚刺激の調整を再度行った。加えて、新規に導入された3T-fMRI装置での実験環境を整えることに時間がかなり、また脳波キャップも買い替えたため、実験実施の設定にかなりの時間を要してしまったが、精密なデータを測定するための設定を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の予定としては、脳波とfMRIによる生理指標測定データとその分析から得られた結果から、聴覚刺激により喚起された動機づけは、脳 の「どこ」を活動させ、また「どのように」脳を活動させていたかのモデルを構築することに加え、動機づけの度合いをより精密に数値化し、行動指標との相関を見ることであった。 しかし、実際に実験(予備)を行った結果、いくつかの問題点が出てきた。新規の3T-fMRI装置(東大医科学研究所)を用いての聴覚刺激実験の設定が上手く確立できなかったため、fMRI実験の実施が遅れてしまっている。また、fMRI実験の前に行った脳波実験では、実際に聴覚刺激課題を呈示したところ、条件設定内の聴覚刺激に調整が取れていない部分(例:異なる条件設定なのに違いがわかりづらい)があるところがわかり、再度聴覚刺激の録音を行い、課題(の中で呈示される聴覚刺激呈示部分)の修正を行った。脳波実験では、既存の電極キャップでは装着に時間が掛かることがわかり、装着時間を短縮できる新しい脳波キャップを購入したため、精密なデータ測定のための設定等にも時間を取られ、必要なデータの収集には予定より遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、引き続き不足している実験データの収集から始める。実験設備の設定を確認するために数名分の測定を行い、データを分析し、課題のトリガーが正確にデータに打ち込まれているか、不要なノイズ混入の有無を確認し、実験データの収集を開始する。データ測定は、昨年度と同様に脳波測定とfMRIを用いた実験は別々の日程で行う(実験設備は異なる場所に設置されているため)。精密なデータ測定のためにトレーニングと本実験で一組の実験として構成され、課題に慣れるためのトレーニング後、別の日に生理指標を測定する本実験を行う。被験者には謝金を支払う。脳波データの分析には、加算平均処理から発生源推定まで脳波解析ソフトウェアBESAを使用する。条件間での差があるかどうかの確認には、繰り返しの分散分析(MANOVA)を行い、どの条件のどの電極位置で振幅の差があるのかを確認後、主成分分析を行い、どのような成分(脳波の特徴)が含まれているのかを調べる(主成分分析は、これまでの統計分析による被験者内の条件や左右半球や電極間の比較では見えないSPNの構成成分から違いを探ることができる。多電極で被験者数の多い本研究での脳波実験に最適であり、これまでにはわからなかったSPNを発生させる活動を明らかにすることが可能になった。)fMRIデータ分析にMATLAB上で作動するソフトウェアSPMを用いる。通常の分析とPPI(PsychoPhysiological Interaction)分析を行う。PPI分析では、確認された賦活部位からその賦活部位同士での機能連関を見ることができるため、脳のどこがどのように働いているかを推定する。大量のデータの扱うため東京工業大学所有のスーパーコンピューターTSUBAMEを利用し大幅な時間短縮を行う。実験データの結果は、国内学会と国際学会にて発表し、その後論文として国際誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生理指標測定の実験の遂行が予定より遅れ、そのため被験者謝金の支払いが行われなかった。 追加の実験に関わる消耗品、また分析に関わる費用が主な支出の予定で、具体的には予備電極や脳波電極ジェル、分析に必要な学内のスーパーコンピューターの使用料、データ収集や分析を手伝ってもらうリサーチアシスタントの雇用費用、実験に協力してもらう被験者への謝金である。加えて、取りまとめた本研究の報告のため、国内外への学会参加への旅費に使用する。
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