2013 Fiscal Year Research-status Report
能動的なリハーサル制御過程を中心としたワーキングメモリ機能の比較心理学的研究
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24530913
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷内 通 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (40324058)
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Keywords | ワーキングメモリ / リハーサル / ラット / リクガメ / アカハライモリ / キンギョ / 放射状迷路 / 指示忘却 |
Research Abstract |
本研究は,ラット,リクガメ,アカハライモリ,キンギョにおける学習課題遂行について検討することにより,ワーキングメモリ過程と能動的リハーサルの制御機能の系統発生について明らかにすることを目的とする。 ラットの指示忘却実験では,昨年度に示した知見について,記銘(R)手がかりと忘却(F)手がかりの種類を変更した追試を行った。昨年度は,各アームの中央と末端に餌皿を設置し,中央皿でのwin-shift課題を与え,末端皿で与える2種類の餌をR/F手がかりとして訓練した後に,R/F指示とは矛盾するプローブテストで成績が低下することを見いだした。本年度はR/F手がかりを末端皿の1種類の餌に被せる2種類のカバー物体とした場面で検討した。しかしながら,指示忘却効果が得られなかったことから,指示手がかりの明瞭性等の点からの再検討の必要性が示唆された。 リクガメでは放射状迷路遂行における嗅覚・視覚手がかりの利用可能性について検討した結果,ランダムに配置された餌の場所を偶然水準以上の確率で選択できることが示された。この結果は,リクガメが餌刺激について嗅覚等手がかりを利用可能であることを示すものであり,迷路学習装置についてのさらなる改良の必要性が示された。 キンギョでは,放射状迷路のアームの強制選択法による系列位置効果について, win-shift課題とwin-stay課題において検討した。その結果,win-stay課題よりもwin-shift課題の習得が速やかであるというラット型の結果が確認された。また,win-shift課題では新近性効果が生じることを示した。 アカハライモリについては,昨年度に示した古典的条件づけの手法を用いて,条件刺激の先行提示による潜在制止効果について検討した。その結果,潜在制止現象は認められず,ラットよりもキンギョに近い能動的注意制御の不在を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの指示忘却では情動反応統制実験だけでなく,認知資源配分型の指示忘却現象を確認し,計画を上回るペースで研究が進行している。リクガメについては,空間手がかり以外の手がかりの利用可能性が示されたことから,装置の改良が必要となり,やや計画が遅れることになったが,より厳密な実験事態の構築のためには必要なステップであると考えている。アカハライモリについては,古典的条件づけの成立を明確に示すことに成功したため,T字迷路学習の放射状迷路への展開という計画を修正し,古典的条件づけにおける情報の能動処理に関わる現象について検討しており,全体としての進度は順調であると考えられる。キンギョについては,昨年度までに,放射状迷路の遂行成績を向上させることが困難であることが示されたことから,系列位置効果による検討に切り替え,一定の成果を得ている。 以上を総合すると,種毎に進度に差はあるものの,研究全体としては概ね計画通りの進行状況であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットの指示忘却では,これまでに成功している餌刺激による指示の実験を展開し,各種の一般性,特にラットの能動的な情報処理を引き出す可能性が示唆されているwin-shift課題における再現を検討する。 リクガメについては,示唆された問題に対する装置の改良を行う一方で,放射状迷路以外の迷路学習,具体的には1回の報酬提示により多数の反応を強化するタイプのHill迷路による系列位置効果実験の可能性を検討する。 キンギョについては,昨年度示唆された系列位置効果実験をより精緻かつ徹底的な訓練により再検討する。 アカハライモリについては,新たな知見が見込める取り組みとして潜在制止現象による能動的注意制御過程の検討を継続して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リクガメの放射状迷路実験における餌刺激の視覚・嗅覚手がかりの利用可能性のテストにおいて,これらの手がかりの利用が示唆された。これは迷路遂行における純粋な記憶手がかりの利用の評価を困難にする要因となる。そこで,予定していた複数迷路の制作を中止し,これらの剰余手がかりの利用を排除するための設計を行い,次年度に改めて複数の個体を同時実験可能な複数迷路の作成を行うことした。このため,複数迷路の作成を予定していた経費について次年度に使用することとした。 リクガメ用に餌刺激の視覚・嗅覚手がかりの利用可能性を排除できる迷路を設計し,その作成のために使用する予定である。
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Research Products
(11 results)