2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530918
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
菅 理江 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10342685)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 刻印付け / 記憶 / 学習 / 国際研究者交流 / イギリス |
Research Abstract |
ヒヨコの刻印付けを用いて、学習における記憶の脳内表象と記憶干渉のメカニズムを解明することが本研究の目的である。実験場面での刻印付けは孵化後48時間以内のヒヨコに人工刺激(内部照明付き、訓練中は回転)を提示することをもって訓練とし、その学習効果は訓練に用いた人工刺激と新奇な人工刺激を順番に提示し、訓練刺激に対するヒヨコのアプローチの全アプローチに対する割合で示す。平成24年度の研究計画は1. 新刺激の導入によって行動はどのように変化するか2. 記憶の固定化に伴う神経細胞の活性、について検討するというものであった。 1. 行動実験:新刺激の導入によって行動はどのように変化するか 刻印付け訓練後に第2刺激を第1の刺激と同じ時間提示して、第1刺激への偏好の維持の度合いを検討した。また第2刺激提示のタイミングを記憶の固定に関連する時期にした場合、どのような変化があるか検討した。第1刺激を2度繰り返して提示するグループと比較した場合、2度目の提示に対するアプローチの時間的分布が既知・新奇の刺激によって異なり、一つの指標として用いられうることが分かった。第2刺激の提示タイミングによる差は観察されるが明確なものではなく、現在詳細な解析を行っている。 2. 免疫組織化学実験:記憶の固定化に伴う神経細胞の活性 刻印付けに必須な脳部位であるintermediate and medial mesopallium (IMM)において、学習後の決まったタイミングで神経細胞の活性が変化することが知られている。記憶の固定化に関わると考えられる訓練開始後8-10時間でのIMMの神経活動を神経活動マーカーの一つであるFosタンパクの発現で検討した。安静にしておく群と固定化を妨害する不随意の運動をランダムにさせる群を比較したところ、安静群においてより多いFos発現細胞が観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は行動の変化と脳の可塑性の検討から記憶の脳内表象と記憶干渉のメカニズムを解明することを目的としている。本年度はこの二つの側面を行動実験と免疫組織化学実験から検討し、それぞれパラメータの設定と基本的な実験手法、プロトコルの確定を目標としていた。 今年度の行動実験の成果から、今後おこなう免疫組織化学実験のための実験群のパラメータ調整が完了し、また免疫組織化学実験ではFos免疫組織化学染色および細胞数カウントのプロトコルを確定できた。行動実験では夏期に被験体の発育不全などの問題が生じ、かなり当初の計画の調整を余儀なくされたが、現在その調整もできたため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度以降も引き続き、ケンブリッジ大学Dr Brian McCabe(連携研究者), Dr Alister Nicoleとの共同研究を続ける予定である。24年度の成果は25年度の国際学会にて発表が計画されている。 25年度は24年度の成果を踏まえ、2つの刺激の脳内表象を同一個体の脳で比較するために、免疫組織化学による検討を続けていく。 既に実験が始まっているのは2つの刺激に対する脳内表象をFos発現細胞の数で検討する実験で、同じ刺激を2度提示する場合と2種類の刺激を提示する場合を比較することによって、同一の細胞が異なる刺激に対して反応するのか、それともまったく異なる神経細胞群が反応するのかを検討する。 また、24年度に得た、記憶固定化の時期におこる神経活動が、どのような神経細胞群で行われているのか、蛍光2重染色を用いて、細胞特性の検討を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では当初、被験体飼育のための孵卵器等の設置を計画していた。しかし24年度のケンブリッジ大学との共同研究に際し、より適切な機器の選定が必要であることがわかった。今年度も引き続きケンブリッジ大内研究室での作業が行えるため、こちらでの行動実験を優先し、さらに共同研究者と国内での飼育施設に関する検討を続けている。これらの機器の購入を今年度以降に変更したため、24年度の主な研究費の使用用途は免疫組織化学実験に関連する薬品・抗体類およびイギリス国内での動物実験執行のためのライセンス取得に伴う費用となった。 平成25年度も免疫組織化学実験が主な手法となるため、基本的に抗体および免疫組織化学用キットが主たる使用目的となる。またサンプルの保存、輸送、データ処理のための機器レンタル料への使用が検討されている。 孵卵器設置に関しては、現在設置予定場所である埼玉医科大学動物研究棟との相談を進めている段階である。
|