2013 Fiscal Year Research-status Report
声質の認知に及ぼす発話スタイルの影響と声質情報処理モデルの検討
Project/Area Number |
24530919
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
重野 純 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (20162589)
|
Keywords | 声質の知覚と認知 / 感情音声 / 言語情報 / 文化間比較 / 日本語母語話者 / マルチモーダル / 話者の感情状態 |
Research Abstract |
研究の最終目的である「声質の情報処理モデル」を構築するため、感情音声や発話リズムなどの発話スタイルを変数とした実験を行ってきた。2013(平成25)年度にはいくつかの実験を行った。主要な3つの実験の概要を以下に述べる。一つは、前年度から引き続いて日本語母語話者と中国語母語話者の音声による感情認知について実験を行い、その結果を以前に行った日米の感情認知実験の結果と比較し、文化間(in-group, out-group間)比較を中心にして考察した。この結果については、国際誌に投稿し掲載された(2013.9)。二つ目は、発話者と聴取者の母語が異なる場合、言語的背景の差異は聴取者の感情認知にどのような影響を及ぼすかについて検討したものである。この研究はこれまでほとんど行われておらず、いくつかの新しい事実が得られた。この結果については、学会誌に投稿し、掲載予定となっている(2014.7に掲載予定)。この研究については、次年度も引き続き行う。三つ目は、声質の同定と弁別に関する実験であり、次年度も継続して実験する予定である。 このほか、ランダムスプライシング(日本語短文を読み上げた音声をランダムに切り出してランダムに並べ直す)実験も行った。また、マルチモーダル実験についても平成24年度とは異なる条件で引き続いて行った。この実験ではこれまで視覚提示(表情)の場合にはin-group効果が認められるのに対して、聴覚提示(感情音声)の場合には認められないという結果が得られており、この点についてさらに実験してデータを収集したが、分析はまだ途中段階であり、次年度に引き続き行う。 以上の実験成果から、最終的に声質がどのように情報処理されているのか、そのプロセスを解明していくための基礎的なデータを得ることができたと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は声質の知覚・認知メカニズムを明らかにすることである。平成25年度は研究2年目であり、予備実験を行うとともに研究1年目(平成24年度)の研究成果をもとにした本実験を複数行った。感情認知の文化間比較に関しては、中国語母語話者について調べた実験の成果をもとに、話者側の感情状態が感情表出に及ぼす影響という異なる視点から、スウェーデン人、ロシア人、ウクライナ人、ブラジル人を話者に用いて実験を行った。その結果、プロの俳優であっても話者自身が使用する言語の意味情報から影響を受けることが明らかになった。さらに、感情判断時の提示刺激数をパラメーターにして、提示される感情音声の数が感情認知の成績にどのように影響するのかについても調べた。声質の知覚・認知に関するランダムスプライシング実験も一部行った。さらに、平成24年度に得た実験データは数が多かったため、平成25年度にその分析も行った。 本年度は昨年度(平成24年度)の成果を学会発表し、論文にまとめた。さらに、今年度(平成25年度)に得た新たな知見についても論文にまとめ投稿した。これまで3本の学会誌への投稿を行ったが、うち2本が掲載または印刷中であり、1本が審査中である。学会発表は、日本心理学会、日本基礎心理学会などにおいて行った。 実験の種類や数が多かったため、前年度同様、今年度もデータの分析を一部次年度に持ち越したところはあるが、実験はほぼ計画通りに進んでおり、研究全体としてはほぼ年度当初の目的を達成できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にあたるので、(1)研究の最終目的である声質の情報処理モデルの提案、(2)そのための実験をさらに複数行うこと、(3)成果発表を国内・国際学会にて行うこと、(4)研究成果を国際学会誌に投稿すること、(5)研究成果を書籍にして刊行すること、の5点を予定している。(3)(4)については、実験の実施とともに2012,2013年度の2年間にすでに行っているが、今年度はこれまでの研究成果をまとめるために、新しい実験とこれまでのデータを増やすため・確認のための実験を行い、声質がどのようなプロセスで知覚・認知されるのかを示すことを目的としている。 具体的な実験の予定としては、まず声質の記憶について、時間要因だけではなく発話者の特性や判断時の文脈などを考慮した実験を予定している。どのような声であるかの記憶が記銘時の文脈的背景や使用する言語の影響をどのように受けるのかについて検討する。また、話者の特性について昨年度行った実験よりもさらに詳細に言語的情報や文化的背景の条件を統制して検討する。さらに、これまでの実験の継続であるマルチモーダルな(特に声質の知覚・認知と視覚情報との関連)観点からの検討、等の実験を計画している。 これまでの研究で一定の成果が得られているので、今年度も積極的に学会(国内・国際)において公表する。同様に、これまでも数本の論文を投稿・掲載されているが、今年度も引き続き論文の投稿を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度に行った視聴覚実験の分析結果が完全には終わっておらず、編集内容を決定するのが次年度にずれた。そのため次年度に編集費用が必要となった。 認知実験のためのDVDを撮影、編集するために使用する。
|
Research Products
(11 results)