2014 Fiscal Year Research-status Report
声質の認知に及ぼす発話スタイルの影響と声質情報処理モデルの検討
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24530919
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
重野 純 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (20162589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 声質の認知 / 言語情報 / 感情音声 / 文化間比較 / マルチモーダル / connotation / 話者の感情状態 / 日本語母語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終目的である「声質の情報処理モデル」を構築するため、感情音声や発話リズムなどの発話スタイルを変数とした実験を行ってきた。2014(平成26)年度はいくつかの実験と論文作成を行った。主要な3つの実験の概要を以下に述べる。一つは、発話者と聴取者の母語が異なる場合、言語的背景の差異は聴取者の感情認知にどのような影響を及ぼすかについて検討したものである。この研究は前年度に行いいくつかの新しい知見が得られたが、新しい問題点も見つかったため、実験内容をさらに発展させて、視覚のみ条件とAV条件によるマルチモーダル実験を実施した。このテーマに関するこのような刺激提示条件による実験はこれまでほとんど行われておらず、いくつかの新しい事実が得られた。これらの結果については、その一部を国際学会誌に投稿し現在審査中の段階である。またその一部は、次年度の学会にて発表することを予定している。二つ目は、パラ言語による感情認知や他のパラメーターについての認知に関する実験であり、2種類の実験を行った。これらの結果については、現在結果を分析中であり、次年度中に論文投稿の予定である。3つ目は、前年度から行っていた声質の同定と弁別に関する実験であり、今年度はこれまでのデータで不足している部分についての追加実験を行った。分析を終わり、国際学会誌に投稿するため、現在論文を執筆中である。 以上の実験成果から、最終的に声質がどのように情報処理されているのか、そのプロセスを解明していくための基礎的なデータを得ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、研究はほぼ順調に進行しており、研究成果は順次論文にして学会誌に投稿し、掲載されてきた。現在、審査中の論文もある。さらに、残りのデータについて論文を作成中であるが、追加実験の必要も生じることが考えられる、という状況である。 本研究の目的は声質の知覚・認知メカニズムを明らかにすることである。平成26年度は研究3年目であり、新たな予備実験を行うとともに前年度の研究で得られた成果をもとにした本実験を複数行った。感情認知の文化間比較に関しては、話者側の感情状態が感情表出に及ぼす影響という異なる視点から、スウェーデン人、ロシア人、ウクライナ人、ブラジル人を話者に用いて実験を行った。前年度の研究により、プロの俳優であっても話者自身が使用する言語の意味情報から影響を受けることが明らかになったが、今年度はさらに、感情の提示モードを聴覚に加えて、視覚のみと視聴覚の場合について検討した。聴覚のみの場合についても被験者数を増やして、より信頼性の高い結果を得た。このほか、外国語の音韻の響きに関する実験や声質の知覚・認知に関するランダムスプライシング実験も行った。さらに、前年度までに得たデータの分析も行い、論文作成・投稿を行った。 今年度は昨年度までの成果を学会発表し、論文にまとめた。さらに、今年度に得た新たな知見についても論文にまとめ投稿した。これまで投稿した複数の論文が掲載または印刷中であり、審査中論文もある。今年度、日本心理学会において研究発表を行った。 実験の種類や数が多かったため、前年度同様、今年度もデータの分析を一部次年度に持ち越したところはあるが、実験についてはほぼ計画通りに進んでおり、ほぼ年度当初の目的を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は最終段階にあり、現在研究成果を論文にまとめている。今年度に行った視聴覚実験のデータ数が多かったため、分析結果を出すのに時間がかかり、論文作成が当初の終了予定であった3年目に終了できなかった。現在までに予定していた実験は終了しているが、執筆中の論文を完成する過程で必要になった場合、もしくは査読の過程で必要になった場合は追加実験を実施する予定である。さらに新たな論文作成と研究成果の国内・国際学会での公表、研究成果を書籍にして刊行すること、等を予定している。 本テーマについての今年度の研究は論文作成が主となるが、その際これまで数多く行ってきたマルチモーダルな(特に声質の知覚・認知と視覚情報との関連)研究と文化間比較の研究成果とを合わせた総合的な観点からの考察およびモデルの作成を予定している。 本研究テーマで得られた成果については、日本心理学会、日本基礎心理学会、国際心理学会(ICP2016)において公表する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に行った視聴覚実験のデータ数が多かったため、分析結果を出すのに時間がかかり、論文作成が次年度にずれたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英語論文作成にかかる費用(ネイティブによる英文校閲料など)、投稿にかかる費用、追加実験を行う場合は実験被験者に支払う謝金に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)