2012 Fiscal Year Research-status Report
認知の左右差における生物学的要因と文化的要因の相互作用
Project/Area Number |
24530923
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大久保 街亜 専修大学, 人間科学部, 准教授 (40433859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 左右差 / 認知 / 文化比較 |
Research Abstract |
本研究では,3カ国にまたがり認知や行動の左右差について文化比較を行う。特に大脳半球機能差に起因する認知や行動の左右差に焦点をあて,文化的要因と大脳半球機能に由来する生物学的要因の相互作用について検討する。 まず,平成24年度は,日本人とオーストラリア人の認知の左右差について,注意分配の文化差に焦点をあて,framed-line課題を用い検討を行った。その結果から,日本人とオーストラリア人で,注意の分配サイズに差があることが示唆された。この成果は,平成24年6月にノルウェーのオスロで開催されたThe International Neuropsychological Society mid-year meeting in Norway 2012 において発表された。 また,ノルウェーとの文化比較に必要な基礎データの収集も行った。ノルウェーには比較的アジア人が少ない。そのため,ノルウェーはアジア人の顔を使った顔認知や表情認知の左右差について文化比較を行うのに最適な環境である。このような文化比較を行うため,今年度は,顔認知や表情認知の基礎データを我々は収集した。この基礎データの一部に学会誌に発表する価値のあるものが含まれていた。我々は,文化比較の前にそれらのデータをまとめ,論文として発表した。この論文は国際的に評価の高い論文誌 Journal of Nonverbal Behavior に採択された。また,表情の左右差について,まとめた研究は平成24年11月に開催された日本基礎心理学会で発表された。この成果は,現在論文としてまとめられ,国際的な論文誌の審査を受けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーストラリア,ノルウェー,日本の3カ国間における文化比較を行う計画のため,それぞれの地域での研究機関で同様に統制された環境を設定することは困難を伴う。それにもかかわらず,今年度はノルウェーで学会大会が開催され,現地で共同研究者と学会大会終了後に打ち合わせができるなど,共同研究者と連絡を緊密にとる機会が得られた。このためもあり,ノルウェーで実験を実施するための準備が思いのほかはかどった。また,オーストラリアでは計画通りにデータが取得でき,そのデータに基づき,国際的な学会でデータを発表することもできた。その一方で,オーストラリアで取得したデータには,予測と必ずしも一致しない部分や,追加データが必要と判断される部分もあった。特にオーストラリアとの比較については,予測通りの結果が得られる一方,必ずしも解釈が確定しない部分もあり,今後,追加でデータをとる必要があるかもしれない。このような展開は実証的な研究では常に起こりうるものではあるものの,成果という観点から計画の達成を評価するなら,計画に若干の遅れを生じさせる可能性があるかもしれない。この可能性を考慮し,データの取得そのものは計画通りに進んでいるものの,おおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,今年度取得したデータに基づいて,さらにデータの取得を進める。特に,25年度においてはノルウェーと日本の文化比較に関するデータを本格的に取得する。昨年度よりノルウェーとの比較を行うため,基礎データをとり,慎重に準備を進めてきた。その甲斐もあり,現在,実験プログラムや実験刺激など実験の手続きな準備は,ほぼ完了した状態である。ノルウェーでの実際のデータ取得手続きに必要な実験者のトレーニングを残すのみである。 また,平成24年度に取得したオーストラリアのデータについて,追加データを取得する。これまでに取得したデータの追加分であるため,実験プログラムや実験刺激の準備にそれほどの手間は必要とならないと予想される。 ノルウェー,オーストラリアでのデータ取得と並行するかたちで,日本でのデータも取得する。 平成26年度はこれらの3つの異なる文化圏から取得されたデータをもとに,認知と行動の左右差について理論化を行う。種々の左右差を計測する課題で取得されたデータを多変量解析アプローチをもちいて検討し,いくつかの主要な処理コンポーネントを抽出する。また,このコンポーネントを文化間で比較することにより,生物学的な制約と社会的な影響の相互作用について,情報処理のレベルで詳細を明らかに出来ると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本におけるデータの取得や分析を行う大学院生のアルバイトに払う謝金が必要となる。このアルバイトにはデータの分析などに実験心理学の専門知識が必要なため,単純な事務作業のアルバイトをお願いするよりも高額な謝礼が必要である。 さらに,今回の計画の柱は国際的な文化比較であるため,オーストラリアやノルウェーの研究機関におもむきデータの取得や分析に関する打ち合わせをする必要がある。データの取得については,機器の操作や照明条件など現場での緻密な確認作業が実験の正否を左右する。そのため,データの取得前には,現場での打ち合わせと確認が必須になるであろう。このような打ち合わせのため,旅費が必要となる。加えて,取得されたデータや研究の成果は,積極的に国際的な学会や論文誌で発表をする予定である。このような学会発表にも当然ながら旅費が必要である。 加えて,心理学実験に必要となるいくつかの器具を消耗品として購入する必要がある。まず,実験における刺激呈示と測定,さらにデータの解析を行うためパーソナルコンピュータを購入する。また,キーボードやマウスなどのコンピュータ入力機器に若干の改造を加え,認知心理学的実験で使用する反応キーを作成する。また,刺激を高空間解像度,高時間解像度で視覚呈示するために,ビデオボードを購入する。また,取得したデータを保存し,さらにそれらについて複数のバックアップを作成するため,ハードディスクやDVDメディアなどを購入する。
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