2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530924
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
日野 泰志 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00386567)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 漢字熟語 / 自動的音韻活性化 / 同音語プライミング効果 |
Research Abstract |
仮名・漢字表記語を読むとき,その処理の初期段階において音韻情報は自動的に活性化されるのだろうか。仮名表記語の読みにおいて,音韻活性化が容易に生じることを示す証拠は多数存在することから(e.g., Chen et al., 2007; Feldman & Turvey, 1980; Kimura, 1984; 斉藤, 1981),本研究では,漢字表記語の読みにおける自動的音韻活性化の有無に関する検討を行った。具体的には,漢字二字熟語ペアを使って,瞬間提示されたプライムを伴う語彙判断課題において,同音語プライミング効果を観察可能かどうか検討した。実験では,漢字二字熟語の同音語ペアに対して有意な同音語プライミング効果が観察された。Chen et al. (2007)が同音語プライミング効果の検出に失敗した同音語ペアを使った場合にも,有意な同音語プライミング効果が観察された。これらの結果から,漢字表記語の読みの初期段階においても自動的な音韻活性化が生じていることが確認された。 また,Hino, Miyamura & Lupker (2011)と同様の刺激を使って,仮名・漢字表記語の音韻-形態対応の一貫性の程度の比較を試みたところ,漢字表記語の音韻-形態対応の一貫性は,仮名表記語と比較して著しく低いことが明らかとなった。この結果から,漢字表記語の読みの課題において音韻活性化による効果を観察しにくい場合があるのは,音韻情報が活性化されにくいためではなく,活性化された音韻情報が形態情報処理のための手がかりとして有効に機能しにくい場合があるためではないかと推測される。今後,この新たな仮説を検証するための実験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,漢字表記語の読みにおける自動的音韻活性化の有無を再検討するとともに,個々の語が持つ形態-音韻対応の一貫性の差異が,自動的音韻活性化の有無を左右する重要な変数であるかどうかを評価することを目的としていた。 漢字熟語プライムを使ったマスク下のプライムを伴う語彙判断課題において,有意な同音語プライミング効果が観察されたことから,漢字表記語の読みにおいても,自動的音韻活性化は生じることが確認された。さらに,同音語プライミング効果を検出できなかったと報告しているChen et al. (2007)の刺激セットを使用した実験でも,有意な同音語プライミング効果が認められたことから,漢字表記語を読む際にも,自動的音韻活性化が生じていることは間違いないものと思われる。 では,なぜ,漢字表記語の読みにおける自動的音韻活性化の存在を疑問視するようなデータが報告されてきたのだろうか。Hino et al. (2011)が使用した仮名・漢字表記語の音韻-形態対応の一貫性にも注目したところ,漢字表記語は,仮名表記語と比較して,明らかに音韻-形態対応の一貫性が著しく低いことが明らかとなった。 そこで,新たな可能性を考察するに至った。すなわち,これまで漢字表記語に対して音韻活性化は生じないことを示すとされたデータは,必ずしも音韻活性化が生じないのではなく,実は,活性化された音韻情報が課題遂行に必要な形態処理などの有効な手がかりとして機能していないのではないかという可能性である。平成25年度の研究は,この仮説の検証を中心に研究を進める予定である。このように平成24年度の研究から新たに検討すべき問題が生じたという意味において,平成24年度の研究はおおむね順調に進展したものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,語彙判断課題に観察される同音語の抑制効果と促進効果がどのようなメカニズムに依存して生じる効果なのかを検討することで,語を読み際の形態-音韻間の交互作用について検討することを計画していた。しかし,平成24年度の研究から,マスク下の同音語プライミング効果などにも,形態-音韻間の対応関係ばかりでなく,音韻-形態間の対応関係の性質が重要な役割を果たしている可能性が考察されたことから,同音語効果に限定せず,同音語プライミング効果なども利用しながら,語が持つ音韻-形態間の対応関係の性質が語の読みに及ぼす影響を総合的に検討する。さらに,漢字表記語の音韻-形態対応の一貫性が仮名表記語と比較して著しく低いことに注目し,漢字表記語の読みにおいて音韻-形態対応の一貫性がどのような効果を生じるのかという問題も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,複数の心理実験を実施してデータ収集を進める必要から,次年度の研究費は,翌年度に請求する研究費と合わせて,その大部分を実験参加者への謝礼と実験実施の際の研究補助者への謝礼として使用する予定である。
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