2013 Fiscal Year Research-status Report
運動学習中のパフォーマンスモニタリングに関する研究
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24530925
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
正木 宏明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80277798)
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Keywords | パフォーマンスモニタリング / 運動学習 / 事象関連電位 / スキル陽性電位 / 偏側性準備電位 / エラー関連陰性電位 / 運動電位 |
Research Abstract |
平成25年度では,スキル陽性電位(skilled performance positivity: SPP)のデータ分析を終えた。従来SPPは反応タイミングを外した場合に減少することが報告されてきた。しかし,パフォーマンスモニタリングの観点では,SPP減少はフィードバック陰性電位(feedback-related negativity: FRN)の重畳によるものと解釈すべきである。実際に,結果の知識の遅延提示によってSPPとFRNを時間的に乖離させると,SPPは減少しなかった。従来の誤解を正すうえで,本知見は意義がある。 運動学習研究では反応プログラミング過程の理解が重要となる。そこで,反応時間課題で反応複雑性と動作持続時間の2変数を直交操作し,偏側性準備電位(lateralized readiness potential: LRP)を測定した。両変数ともに反応時間を遅延させ,反応同期LRPの持続時間を延長させたことから,反応プログラミングは独立した複数の下位段階から構成されることが示唆された(国際誌で審査中)。 さらに標的強度値出力課題で,同一の標的強度値を反復出力した条件と,試行毎に標的強度値を変えた条件で随伴陰性変動(contingent negative variation: CNV)を比較した。CNVは強度パラメータの修正過程を反映して複数標的条件で増大した。標的強度値の出力に関与する脳領域を同定するため,fMRI実験でも用いることのできる実験器具を製作した。 反復運動は動作スキル獲得を促進させるが,同時に認知機能も向上させることを確認するため,トレッドミル走による一過性運動後にP300を測定した。その結果,P300に振幅増大を認め,一過性運動の効果と走姿勢の関与が示唆された。この知見はJournal of Ergonomics誌にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の脳波実験データの解析が終了しており,順次,論文化を進めている状況である点で,おおむね順調といえる。fMRI実験については,斬新な課題を採用することからその準備に時間が費やされてきた。しかし,その実験器具,プロトコルも完成し,研究協力者によるデータ解析体制も整っていることから,平成26年度中にはデータ収集を終え,速やかに解析、結果の解釈ができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では,最終的な目的に位置付けているMRI室内での標的強度値出力課題を用いた実験を完遂させる。研究協力者との連携によって現在,実験プロトコルと実験制御プログラムが完成し,倫理委員会にて研究計画を諮問している。研究計画が承認され次第,データ収集を開始する。研究代表者は所属機関先で毎週水曜日にMRIのマシンタイムを有しており,実験準備がひとたび整えば,速やかにデータ収集ができるものと考えている。 一方で,これまで収集した実験データの論文化を加速させることに力を入れていく。研究代表者には海外研究協力者がおり,最新の研究知見を交換しながら,論文化を迅速に行うことに努める。また,これらを推進する対応策としては,当該研究課題に関するエフォートを増やすことと,実験データ収集および解析に対する人的補助投入の増加を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度では、実験結果および成果発表に関する議論を海外研究協力者と計画していたが、研究出張の1つを体調不良のためキャンセルした。また、MRI実験の準備に時間を費やしたため、MRI実験遂行に必要な被験者謝礼金や必要備品購入への支出を見送った。こうした事態から、次年度使用額が生じた。 最終年度となる平成26年度では、研究成果を纏めるために海外研究協力者との連携がさらに重要となる。そこで、次年度使用額は主に海外研究出張に充てる。また、次年度使用額の一部は平成26年度予算と併せて、運動学習の神経基盤を探るためのMRI実験や脳波実験の被験者謝礼金に充てる。
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Research Products
(8 results)