2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530929
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
吉崎 一人 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (80220614)
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Keywords | 認知的制御 / 視覚的注意 / 視覚情報選択性 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は3つであったが,そのうちの2つの目的について検討をおこなった。 1つめの目的は,視覚情報選択性の調整の生起・持続性並びに,刺激,課題間での般化について明らかにすることであった。刺激間般化について,4つの実験を行い,視覚情報選択性の調整の刺激間般化には呈示位置が重要であることが示唆された。視覚情報選択性の調整の刺激間般化に呈示位置が及ぼす影響を行った。競合頻度が操作された刺激と50%に維持された刺激を混在する事態を設定したところ,両刺激を同じ位置に呈示した場合は,視覚情報選択性の調整の刺激間般化が生じたが,異なる位置に呈示した場合は,般化は生じなかった。この傾向はサイモン課題でも,空間ストループ課題でもおおむね同様であった。 視覚情報選択性の調整の持続性については,3つの実験を行った。持続性はないことが示唆されてきたが,その原因がブロック間の休憩にある可能性を検討した。ブロックレベルで競合頻度を操作するのではなく,1ブロック内をいくつかのフェーズにわけ,フェーズごとに競合頻度を操作した。その結果,各フェーズの適合性効果は,当該フェーズの競合頻度に応じて変動し,当該フェーズ以前の競合頻度経験に影響しないことが示唆された。 2つめの目的は,視覚情報選択性の調整のエイジングを検討することであった。ブロックレベルで競合頻度を操作したサイモン課題を健常高齢者と大学生に実施した。その結果,大学生は各ブロックの競合頻度に応じて適合性効果は変化した。これに対して高齢者は,競合頻度が多いブロックを最初に実施し,その後に競合頻度が少ないブロックを実施した事態では,その逆の事態よりも,適合性効果は大きく変化しないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
競合頻度に応じた視覚情報選択性の調整の生起,持続性,並びに般化については,複数の実験やアプローチから概ね一貫性のある知見を得た。そしてこの知見は当初たてた仮説とほぼ同じであった。この知見を踏まえて,高齢者との差異を検討することが本年度の課題であり,これは概ね申請時の予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの知見から,競合頻度に応じて柔軟に視覚情報選択性の調整は変化することが明らかになった。このような調整傾向の生起が,何試行で得られるかについて検討する。フランカー課題やサイモン課題を使って,16試行,32試行,48試行ずつのブロックを用意して,競合頻度と適合性効果の間の傾向について検討する。 高齢者は,健常大学生よりもこの柔軟性が見られないことが明らかとなっている。さらに刺激間般化や,課題間の般化について高齢者を対象に検討する。柔軟性がないことを考えると,高齢者の視覚情報選択性調整傾向は,それまでの経験に大きく影響することが予想される。 さらに,視覚情報選択性の調整傾向のラテラリティについても検討する。申請者はこれまでサイモン効果を使って競合頻度と視覚情報選択性の調整について検討した結果を再分析すると,左視野に呈示した事態で,調整傾向の変化が大きいことが明らかとなった。そこで,これがフランカー課題でも見られるのか,競合頻度を3水準で変動させてもみられるのかについて検討する。また,左手利きの成人に対しても実施し,右手利き成人と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験参加者への謝礼が,一部実験協力者不参加により,予定人数よりも少なくなったため 研究実施に伴う,実験プログラム作成者への謝礼,実験補助者への謝礼,実験参加者(大学生・高齢者)への謝礼に使用する。さらに,アメリカサンフランシスコで行われるAmerican Psychological Society(5月)で研究成果発表,並びに資料収集を行うため,この旅費に使用する。国内学会では,日本心理学会で特に高齢者実験に関する資料収集や研究発表を行うため,その謝金等に使用する。 英文論文における校閲代にも使用する。高齢者実験を学外で行う際の,ノートPC等の物品にも使う予定である。
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