2012 Fiscal Year Research-status Report
砂糖中毒を制御するための、渇望の増強に対する環境刺激と経験の効果の検討
Project/Area Number |
24530930
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
青山 謙二郎 同志社大学, 心理学部, 教授 (50257789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 砂糖中毒 / craving / 学習 / サッカリン |
Research Abstract |
砂糖に対しても薬物と類似した強い渇望を伴う“中毒”症状が生じ、健康な食生活を送る上で妨げとなると言われている。本研究では、砂糖に対する渇望が獲得され、さらに増強されるプロセスを、条件づけの観点から検討し渇望を適切に制御するための手法を開発することを目的とした。 渇望の増強(渇望の孵化)は、薬物中毒の研究で従来から示されてきたものであり、同様の現象が砂糖水においても生じることは重要な意味を持つ。平成24年度は、砂糖において渇望の増強が生じる要因として、砂糖が高カロリーであることが重要であるかどうかを検討するため、甘味はあるがカロリーの無い物質であるサッカリンを報酬として用いて、同様の渇望の増強が生じるかどうかを検討した。 手続きとしては、以下のような標準的な渇望の増強の手続きを用いた。まず、サッカリン水を報酬としてレバー押し行動を訓練を実施した。その訓練では、サッカリン水が与えられる際に光刺激と音刺激を同時に提示した。その後、サッカリンの摂取を1ヶ月間剥奪し通常の餌のみを与えて飼育した。そして、1ヶ月後のテストで、サッカリン水を摂取するためのレバー押し行動が増加するかどうかを調べた。テストにおいては、レバーを押す行動には、サッカリン水は与えなかったが、光刺激と音刺激は与えた。 その結果、報酬をサッカリン水とした場合にも砂糖水の場合と同様に渇望の状況が生じることが示された。その増強の程度は砂糖水を用いた場合と類似していた。これらの結果は、砂糖水を報酬として用いる場合の渇望の増強において、カロリーが高いことは必要条件ではないことを意味する。さらに、砂糖中毒への対処としてカロリーを含む人工甘味料を用いることが有効ではないことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
砂糖を報酬とした場合に渇望の増強が生じることは従来の研究で示されていたが、それが砂糖に特有の現象であるかどうかは今まで示されていなかった。今回、砂糖の代わりに甘味はあるがカロリーの無い人工甘味料であるサッカリンを用いて、渇望の増強が生じるかどうかを検討した。その結果、サッカリンを報酬とした場合にも砂糖を報酬とした場合と同様の渇望の増強が示された。この結果は、砂糖における渇望の増強に砂糖が高カロリーであることが必要なわけではないことを示す。したがって、従来から砂糖において見られていた渇望の増強は、砂糖に特有ではなく、カロリーのない人工甘味料にも一般化できることが示された。この事は、”砂糖中毒”の制御においては、砂糖だけでなく人工甘味料と連合した刺激についても考慮する必要があることを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、4月から9月まで、米国Washington州のWestern Washington Universityにおいて、同大学のGrimm教授と共同で実験を実施した。9月末に帰国後は、同志社大学において実験を実施した。平成25年度も同志社大学において実験を継続するが、Grimm教授との連携の元に研究を行う予定である。 具体的には、平成24年度後半より実施した実験のデータをGrimm教授と共有し、データの分析及び論文の執筆を共同で行う予定である。また、平成25年度に実施する具体的な研究の手続きについてもGrimm教授とのディスカッションの上で決定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の4月から9月まで、米国Washington州のWestern Washington Universityにおいて、同大学のGrimm教授と共同で実験を実施した。その際、Grimm教授が得ている研究費を使用できたため、平成24年度は7万円程度の余裕が見られた。 平成25年度もGrimm教授との共同研究を継続するが、実験は同志社大学において実施し、研究費としては当該科学研究費を主に用いる。実験の実施に必要な経費の他に、米国へ渡航する経費も使用する予定である。
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