2012 Fiscal Year Research-status Report
教育学の前提である西欧近代人の歴史的文化的制約性に関する研究
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24530938
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沼田 裕之 東北大学, 教育学研究科(研究院), 名誉教授 (80050269)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヨーロッパ近代 / 西欧近代教育学 / フランス革命期 / 理性の教育 / 日本の教育学 / 文化の普遍性 |
Research Abstract |
本研究は日本の教育学が明治以来学んできた西欧近代教育学のあり方を、普遍的なものとしてではなく、西欧の文化的歴史的条件によって制約されたものと捉え、日本の文化的歴史的条件の下にそのまま適用することはできないことを論証しようとするものである。 研究計画の第一に挙げたヨーロッパ思想史の研究書読解については、これまで本研究者が集めた文献に加えて、研究経費でかなりの文献を購入することができ、研究を進めることができた。 その成果は、学会発表などに生かすことができた。当該年度で特に挙げるべきは、2012年6月19-21日にスペイン・マドリードで開かれたザルツブルク大学、マインツ大学、スペイン大学の共催による「芸術、文化、寛容の統一性」というシンポジウムで、研究者が「Ein Blick auf Europa(ヨーロッパへの一瞥)」と題する研究発表を行ったことである(ドイツ語)。その中で、日本とヨーロッパの人間観の相違を説明し、参加者たちと意見を交換した。研究者は、ヨーロッパの文化が文字通り普遍的なものではなく、日本のような別のものの見方をもつ文化もあることを強調したのだが、かなりの反響があった。この論文で示した議論は本研究に直接結びつくものである。 このマドリードでの議論は、同年(2012年)9月9日に名古屋大学で開かれた「第30回フランス教育学会大会」での研究発表『フランス革命期の「理性」の教育と日本』でもより発展させて学会員の批判に供した。研究は、ほぼ当初計画したとおりに進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己評価としては、初年度計画の85パーセントほど達成したと考えている。 だいたい研究は計画通りに進んでいるが、本研究者が2012年11月発病し(白血病)、約3ヶ月入院生活を送ったため、同年冬に予定していたドイツ、スイスなどでの資料収集、研究者との意見交換などができなかった。すなわち、当初の心づもりでは、当該年度中に、もう一度渡欧し、バイエルン国立図書館等で調査をしつつ、ノルベルト・ヒンスケ教授(トリア大学)と意見交換するはずであったが、発病・入院の事態が生じ、その間研究が遅滞した。しかし、取り返しがつかないほどではない。幸い現在(2013年4月現在)病はほぼ回復したので、第1年目の遅れは、第2年度、第3年度に十分に挽回できると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の病が癒えたので、計画書通りに研究を進める予定。すなわち、 1)引き続きフランス革命期に主張された、ヨーロッパの「普遍的な」人類の理念(自由、平等、博愛、理性など)の文化的、歴史的被制約性を継続して究明する。 2)当該年度に実現できなかったバイエルン国立図書館での調査と、ヒンスケ教授との意見交換を実現する。 3)学会誌にこれまでの成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は当初予定していた外国出張を次年度に延期することによって生じたものであり、2013年8月4-10日、ギリシアのアテネで開催される「第23回世界哲学会議」に出席し、これまでの研究成果を発表して、世界の哲学者と意見交換を行う。そのための旅費に使う。 そのほかに1度ドイツ、フランス、イタリア等に出張し、図書館を中心に必要資料を収集する。また、国内学会への出張、東北大学図書館での文献調査などの旅費に使用する予定。 さらに重要図書で購入可能なものを収集する費用に充てる。
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Research Products
(2 results)