2014 Fiscal Year Research-status Report
ラテン語educareとeducereに関する教育概念史研究
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24530954
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白水 浩信 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90322198)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | educare / educere / ラテン語 / ウェルギリウス / アエネーイス / エウテュケス / ブルーニ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度も、引き続きBibliotheca Teubneriana Latina (on line版)を活用し、ラテン語動詞educareの用例検索をおこない、ほぼ作業を完了することができた。直説法から接続法、能動相から受動相、そして分詞にいたる用例を網羅的に走査し、検索した語形ごとに(例えばeduco、educas・・・)」、「著作・史料名」(必要に応じて邦訳名)、「著者名」、「登場箇所」、「前後の文脈を含む詳細」に整理し、一覧表にまとめた成果は有意義かつ画期的なものである。 そのうちこれまであまり言及されてこなかった興味深い用例を挙げておく。古代ラテン語文学の華であり、模範的文例としてしばしば参照されてきたウェリギリウスの『アエネーイス』にもeducareの使用例を認めることができた。その第10巻513行には、quattuor hic iuuenes, totidem quos educat Vfens(ウーフェンスが育てた四人の若者)という用例がある。この箇所は、エウテュケス『言葉の技術(Ars de verbo)』がeducareの語義説明の際に、立ち返って参照していた文例であり、それが「(栄養を与え)養うこと」であり「引き出すことではない」と明言する際の典拠とされており、興味深い。 また本年度は、大英図書館にて海外史料調査を実施した。Leonarudo Bruniによるアリストテレスの『倫理学』、『政治学』、『家政学』(擬アリストテレス)のラテン語翻訳本(1469年頃、シュトラスブルク)を閲覧し、ギリシア語からラテン語への訳語の対応を確認した。現地ではじめて本文献が豪華な装飾が施された写本であり、本邦では閲覧の難しい稀覯書であったことを知り、極めて有意義かつ貴重な渡航であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はラテン語電子コーパスを用い、ラテン語動詞educare及びeducereの用例を抽出し、著者名、著作名、著述年及び文脈を通覧できるデータベースを構築することにあった。現状では、educareについてほぼ作業は完了し、次年度は、educereに関する用例を整理する作業が残されているものの、おおむね順調に研究は進捗している。データ整理によってeducareの用例の特徴は概観可能になったので、educereについてはすべての用例を抽出するのではなく、educareの用例との対照となるようなものに絞り込むことで、本研究の目的は達成されると見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
従前通り、Bibliotheca Teubneriana Latina on lineを活用しながら、研究支援員の協力をも得て、残されたeducereの用例抽出と整理を完了する。ただし、研究計画段階から十分想定されていたとおり、語形だけからはeducareと区別できないよう例も多々存在する。その点に注意しながら、混同されがちな両者の用例を文脈によって識別することに作業を集中することにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、旅費の見込額と執行額に若干の違いが生じたためであり、ごく僅少なものであり、研究計画の大幅な変更を伴わず、次年度、有意義に執行できる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はごく些少なものであり、当初の研究計画通り、十分、使用可能である。
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