2014 Fiscal Year Research-status Report
シャルル・ロラン『学校教育論』から捉えるフランス近代学校文化の形成
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24530975
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
越水 雄二 同志社大学, 社会学部, 准教授 (40293849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シャルル・ロラン / フランス / 学校文化 / パリ大学 / コレージュ / 古典人文学 / 修辞学 / 啓蒙思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランス17世紀末から18世紀前半に王立コレージュの雄弁術教授やパリ大学の学長を務めたシャルル・ロランCharles Rollin(1661-1741)の主著、通称『トレテ・デ・ゼテュード』(1726-1728)の内容を分析するとともに、18世紀中葉から19世紀前半へかけての同書の受容も解明する作業を通じて、フランスの近代的な学校文化が形成された過程を、アンシャン・レジーム期から継承されていた側面にも光を当てる、新たな視点に立って捉え直す試みである。 平成26年度には、フランス国立図書館所蔵の『トレテ・デ・ゼテュード』初版本をはじめとする諸資料を検討し、ロランの教育論が成立していったプロセスの解明に努めた。 ロランが1726年と1728年とに2巻ずつ、合計4巻で公刊した教育論の原題は、『人文学を教え・学ぶ方法―知性と心につなげて―』と翻訳できる。これが刊行直後から、読者にもロラン自身によっても『トレテ・デ・ゼテュード』と簡略化されて呼ばれるようになっていた。とはいえ、その3語からなる通称は、ロランが生きている間に刊行されたテクスト諸版の表題には掲げられていない。通称に日本語の定訳はまだ存在しておらず、本研究で筆者は、同書の内容に照らして『学校教育論』という呼称を提案している。 19世紀以降に版を重ねたテクストは、「幼児期の子どもに適した課業」と「女子教育」との2章からなる第一編に、人文学諸領域の教育内容と指導法を扱う本論の7編が続く、全体で8編からなる構成である。しかし、第一編の内容は、1726年公刊の『学校教育論』の初版には無かったもので、1734年に『補遺』として別冊で公刊されたものであった。ロランの教育論を継承した教育関係者(学者、大学やコレージュの教師)の手によって、その『補遺』を巻頭に据えた『学校教育論』が作り出され、広く普及していったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の実質的な作業面は、申請した計画通りにほぼ進展していおり、全く順調であると自己評価できる。平成26年度は、特にフランスへの出張により、『学校教育論』のテクストが形成された過程を原史料にあたって調査することができ、大きな成果を収められた。 ただし、平成26年度は、学会の日程と校務との重なりから、教育史学会で経過報告ができなかった。また、研究室のホームページでの成果の公表については、最終年度の課題とせざるを得なかった。これらの点から、全体的な自己評価としては、「おおむね順調に進展している」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
4年計画の最終年を迎える平成27年度には、研究の総括に努めると同時に、成果の公表にも積極的に取り組んでいく。 シャルル・ロラン『学校教育論』の翻訳と内容の検討を継続し、その抄訳を発表できるように準備を進める。また、平成27年の6月と12月にフランスへ出張し、テクストの成立と受容をめぐる調査を引き続き進めていく。 成果発表については、平成27年9月下旬に開催される教育史学会で研究発表を行い、その内容を論文にまとめて、同学会の機関誌『日本の教育史学』へ投稿する。 研究室ホームページでの成果の公表は、4年間の研究成果の全容がほぼ定まった時点で実現するようにしたい。
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