2016 Fiscal Year Annual Research Report
Charles Rollin's views on education and the development of school culture in modern France
Project/Area Number |
24530975
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
越水 雄二 同志社大学, 社会学部, 准教授 (40293849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シャルル・ロラン / 人文学 / フランス教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シャルル・ロランCharles Rollin(1661-1741)著『人文学を教え・学ぶ方法―知性と心につなげて―』(1726-1728)の内容を検討し、19世紀前半へかけての受容を解明する作業も通じて、フランスにおける近代学校文化の形成について考察を進めた。ロランの書は公刊当時から「トレテ・デ・ゼテュード」という略称で人口に膾炙してきたが、本研究で筆者は、同書の内容に鑑みて、その略称を『学校教育論』と翻訳している。 フランス革命を経た1799年に、ロラン教育論の『要約』が出版された。著者は不明だが、フランスが「数年にわたり公教育を欠いてきた」状況を打開するため、「最も信頼できる指針」を要約したと言う。『要約』は原著が教育の課題に掲げていた学問・道徳・信仰の三つから信仰を除外しつつ、民衆も学ぶべき学問と道徳を提示した。これは革命期の公教育論議で唱えられた新しい教科書作成の試みであり、公教育の非宗教化の主張を踏まえてもロランの著書が利用されたのである。 復古王政下の1818年、アカデミー・フランセーズがロランの顕彰を懸賞論文とした。入選作のサン=タルバン・ベルヴィル(1788-1868)『ロラン礼讃』によれば、国民がロランに学ぶ意義は古代史学習を通じて祖国愛を心に刻むことにあり、ロランは公教育の最高位に就いて市民の育成に献身した。「教育学」を目指した彼の仕事の中で、キリスト教の真価は道徳の完成を意味したという解釈が、知の権威から公認されたのであった。 ロランの著書が19世紀にも古典人文学教育で参照された史実は夙に知られるが、本研究は新たに、彼の『学校教育論』は、フランス革命後に模索された公教育の構築において、教科書作成を含む市民教育の創出へ向けて、単に一学問領域の教科書としてではなく、近代社会に適する学校文化をつくり出す材料として利用されていた受容を解明できた。
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