2014 Fiscal Year Research-status Report
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24530977
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
相馬 伸一 広島修道大学, 人文学部, 教授 (90268657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コメニウス / パトチカ / 教育学 / 教育思想 / チェコ / 思想史 / 哲学 / フーコー |
Outline of Annual Research Achievements |
① 国際教育史学会で研究発表:7月にロンドン大学で開催された国際教育史学会で、Peace and Education according to Arata Osadaと題して研究発表し、戦前から戦後初期を代表する教育学者であった長田新の学説の変遷についてとりあげ、コメニウスへの評価に焦点を当てつつ論じた。 ② 『ヤン・パトチカのコメニウス研究――世界を教育の相のもとに――』の出版:チェコ20世紀を代表する哲学者ヤン・パトチカが、本研究の対象であるチェコ17世紀の神学者・哲学者・教育者コメニウスについて研究した代表的な論文8編を、チェコ語およびドイツ語のテクストから訳出し、詳細な解題を付し、科学研究費助成事業(研究成果公開促進費)の採択をうけ、九州大学出版会から8月に出版した。 ③「教育学の方法論の歴史的再検討のために~コメニウス研究の視点から~」を発表: 教育学、なかでもその基礎分野においてしばしば突きつけられる、理論と実践の乖離という問題がある。教育思想史学会のシンポジウム「教員養成と教育思想史」に対するコメント論文として、コメニウスの思想における相の異なる事象を関連づける思考法の可能性を論じた。 ④「ヤン・パトチカのコメニウス批判?--オロモウツ講演(1967年)とその前後--」発表: パトチカは1967年にオロモウツで開催された国際会議でコメニウスの哲学体系を「お伽噺」であると評した。本論文は、こうした否定的評価の背景を考察した。パトチカは、この講演に先立ち、フーコーの『言葉と物』に関する詳細な書評を発表した。その関連で、パトチカはフーコーの視点を受け入れ、コメニウスへの評価を変えたという分析もある。しかし、オロモウツ講演以後の彼のコメニウス研究を注意深くフォローすると、フーコーの視点はパトチカが新たなコメニウス解釈を展開する触媒的な機能を果たしたと結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究成果公開促進費の採択を受けて出版した『ヤン・パトチカのコメニウス研究――世界を教育の相のもとに――』(九州大学出版会)は、『図書新聞』、教育哲学会『教育哲学研究』、教育思想史学会『近代教育フォーラム』で書評等が掲載あるいは掲載予定であり、高い評価を受けている。 平成26年度後期から1年間、チェコ共和国科学アカデミー哲学研究所の客員研究員として、本研究のテーマを含めた諸課題にとりくむ機会が与えられ、パトチカのコメニウス研究の変遷、戦後チェコスロヴァキアのコメニウス研究の変遷について、大きく研究を進展させつつある。とくに上記の「ヤン・パトチカのコメニウス批判?--オロモウツ講演(1967年)とその前後--」は分量の関係で所属大学の紀要に掲載したものであるが、詳細な検討ができた内容であると自己評価している。 以上のことから上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本年度は研究成果公開促進費の採択を受け、後期からの派遣研究以前に同事業を完了させる必要があったことから、その推進に専念した。また、前年度まで所属先の副学長としての任期があり、文部科学省補助金事業「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」等の担当していた事業の引継ぎにも力を割く必要があった。 平成26年度後期から派遣研究によって、資料等の収集がきわめて容易になり、研究が進展しているが、旅費や資料購入に関わる経費が当初の見込みより少なくて済むようになったために、研究経費の執行率がやや低い。しかし、執筆論文を英語訳あるいはチェコ語訳して発表する機会が与えられ、今後、その校閲等で研究経費の活用を図ることができる見通しである。
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Causes of Carryover |
平成26年8月から平成27年8月までの1年間、所属先の派遣研究制度により、チェコ共和国科学アカデミー哲学研究所に客員研究員として派遣されている。これにより、本事業申請時に比べて、資料収集にかかる旅費等の経費が見込みよりも少なくて済むようになった。また、派遣研究に入って以降、しばらくの間、日本語で執筆する論文等に集中していた。このため、経費の執行が遅れ気味になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本事業年度後半から、チェコ語および英語での研究発表や論文執筆の機会が与えられ、さいわいなことにチェコ語翻訳の専門家を見つけることができた。次年度、6月にはロシア、サンクトペテルブルクで開催される学会での発表が受理されており、また、同月にはアメリカ、ニューヨークで開催される学会に参加予定である。これらの旅費として経費を執行するとともに、発表論文の翻訳・校閲にも経費の有効活用を図っていく。
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