2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ高等教育における知的財産権のガバナンスに関する歴史研究
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24530982
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Research Institution | 南山大学短期大学部 |
Principal Investigator |
五島 敦子 南山大学短期大学部, 英語科, 教授 (50442223)
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Keywords | アメリカ大学史 / 高等教育 / 国際研究者交流 / 知的財産権 / WARF / アメリカ成人教育史 / Engaged University |
Research Abstract |
本研究の目的は、知識生産および知的財産権と大学の社会的使命の関係を機関レベルで長期的に解明することにある。本年度は、中間年度として、アメリカ高等教育史研究者を招聘して研究交流を行うとともに、これまでの口頭発表の成果を土台に、ウィスコンシン大学の事例研究をまとめた。 1.海外研究者招聘・研究交流 ウィスコンシン大学ネルソン教授を招聘し、大学史研究会第36回セミナー(2013.10.26)で記念講演を行い、研究交流を行った。講演では、植物学と地質学の研究者たちの事例を取り上げ、独立戦争後から1840年代に、ナショナリズムとインターナショナリズムが相互に影響し合い、学問や科学の制度化を促して近代的な研究大学が出現したことが明らかにされた。アメリカ教育史研究会(2014.1.13)では、研究協力者の間篠剛留が、19世紀前半におけるアレクサンダー・ミクルジョンの実践と大学教育論をジョン・デューイの議論と対比させて考察する発表を行った。同じく研究協力者の原圭寛は、18世紀後半にイェール大学の学長を務めたエズラ・スタイルズのカレッジ・カリキュラム論の特徴を考察する発表を行った。 2.ウィスコンシン大学の事例研究 第一に、1920年代アメリカにおける産学連携組織の形成過程を、ウィスコンシン大学同窓会研究財団(WARF)の初代所長ラッセルの役割に注目して分析した。ラッセルは、アジア訪問の経験により、日本の理化学研究所から示唆を受けて知的財産権の保護を主張したことを明らかにした(教育史研究室年報)。第二に、第二次大戦後アメリカの大学で成人学生が受容された経緯を、フレッド学長の大学改革に注目して分析した。フレッドは、退役軍人が成熟した成人であるために大学成長の鍵となるとみて大学改革を実行し、その結果、ウィスコンシン大学システムの形成を導いたことを明らかにした(社会教育学研究)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネルソン教授招聘に先立ち、事前研究会(2013.9.7)を開催して18・19世紀アメリカ大学史への理解を深めたほか、アメリカ教育史研究会と連携して若年研究者の研究発表を促した。これにより、従来、連携が薄かった国内外のアメリカ大学史研究者の交流を推進することができた。また、1920年代および1950年代のウィスコンシン大学に関する事例研究を論文としてまとめることができた。史料調査では、戦前期にWARF所長のラッセルが訪問したとみられる各帝国大学のうち、東京帝国大学、北海道帝国大学について、訪問の事実が確認できる史料を発見できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、ウィスコンシン大学でWARF関係者に対する面接調査を実施するとともに、アーカイブズで史料調査を行う。国内では、ラッセルが訪れたとみられる京都大学、東北大学、九州大学で史料調査を行うとともに、収集した史料を分析して戦前期日米科学交流の実態を解明し、研究成果をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、海外研究者招聘と事前・事後研究会の費用が多額となる予想であったため、当初の計画であった海外調査を実施しなかった。また、研究発表は、予定していた日本教育学会年次大会ではなく、名古屋大学教育史研究会定例研究会(2013.9.12、ウィル愛知)で行ったため、旅費が不要となった。 平成25年度に予定していた海外調査(アメリカ)を実施するとともに、日本教育学会年次大会で研究発表(九州大学)を行う。
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