2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530984
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 光夫 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (30375175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敏明 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (20146111)
倉元 直樹 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (60236172)
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Keywords | 大学入試 / 東アジア / 学力保証 / 入試多様化 |
Research Abstract |
・平成25年度は中国と台湾の実地調査を中心に実施した。 ・中国については,昨年の実地調査(教育部,教育部教育発展研究センター,北京大学,清華大学等)を踏まえ,さらに個別大学の事例を収集し,入試担当教員らとの意見交換をした。訪問機関は,北京科技大学,北京師範大学,上海市の同済大学,東華大学。2010年の党・政府教育改革指針(国家中長期教育改革発展計画要綱)以来の入試改革の動向と,このうち政府が最も力を入れている,我が国AO入試に類似した「独自事前選抜(自主招生)」の詳細を聴取し,本研究のテーマである学力保証の観点からの意見を交換した。この2年にわたる調査分析をもとに「中国の教育改革と学力保証」と題する論文をまとめ,独自事前選抜などの特別選抜が導入拡大され,多様化に向かっているとはいえ,独自事前選抜でも筆記試験が課され,また特別選抜を含め最終的に全国統一入試成績により合否が決定されるなどいぜん筆記試験に重きを置く入試が維持されており,この意味で学力保証が機能していることを明らかにした。しかし,中国が目指す創造性や実践能力を重視する学力が入試によってどれだけ測られ,保証されているかに関してはなお調査分析が必要である。 ・台湾については,教育部,大学入学試験中心,台湾大学,台湾師範大学,東呉大学,淡江大学を訪問,調査した。台湾でも従来の統一入試(聯合試験)のみによる選抜方式から,大学独自選抜(甄選入学),学校推薦入学(繁星推薦入学)の導入による入試多様化(多元入学)が進められている。ただし,ここでも後者2種類の入試において高校第3学年初めに統一試験(学科能力測験)が課され,筆記試験の依存度が高い。実地調査で得た情報や文献をもとに多元入学の成果や問題点を更に分析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・本研究は中国,韓国,台湾の東アジア地域における大学入試多様化についての最新の動向を把握し,これを我が国の最近の入試改革における課題の一つになっている「学力保証」の観点から比較分析することを目指している。 ・韓国については,第1年目に実地調査を行い,最近の動向,とくに「入学査定官入試」(我が国のAO入試に類似)の導入普及政策及びその実態を把握し,これを学力保証の面から分析し,一つの論文にまとめた。ただ,調査した事例の大学が2大学と少なく,他の個別大学の実態を踏まえた幅広い検討も必要と考えている。 ・中国については,2年間の調査により,教育部や研究機関,個別大学への訪問調査および文献調査によりおおむね実態を把握できており,これを踏まえて第2年目に論文をまとめた。ただし,韓国と同様,個別大学の事例をさらに集め,検討を深化させたい。 ・台湾については,第2年目の調査となったが,訪問先の協力によってかなり詳細な情報を入手できた。3年目にこれを詳細に分析し,論文につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
・文献収集および実地調査を中心に,東アジア地域の入試改革の動向を詳細に把握し,これをもとに比較分析を進めていく。 ・とくに3地域共通しているのは,従来の統一入試中心の選抜方式を改革し,大学が積極的に関わり,独自のポリシーと評価方法・観点をもって選抜する方式を導入し,普及させようという多様化方策である。この選抜方式の比較検討が本研究のポイントになると考えている。 ・中国,韓国については,これまでの調査を改めて点検し,不足の点を確認した後,残された1年で,実地調査を含めてこれを補う調査を実施する。 ・台湾については,まず先の調査等による情報・文献の分析を行い,一つのまとめを行った後,なお必要があれば実地調査を改めて実施する。 ・また国内の大学入試改革についても,教育改革実行会議や中央教育審議会などの議論をもとに新たな改革が模索されている。こうした改革動向にも目を配り,研究に反映させていきたい。 ・これら3地域の調査を踏まえ,最終的にはその比較分析をまとめ,我が国の入試改革にとっての示唆となる観点を得たい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・中国の実地調査について,さらに多くの大学や研究機関を訪問予定であったが,先方の都合で訪問が実現できなかったため,旅費の費用が見込みより少なくなった。台湾調査についても,大学の用務等で十分な日数を確保できず,旅費が少なくなった。また台湾の訪問機関から多くの資料寄贈があり,予定していた現地での図書購入が必要なくなった。 ・研究分担者多用のため,本研究に十分従事できなかった。 ・韓国,中国について研究機関,試験機関および個別大学の訪問を予定しており,その旅費に使用する。また現地での資料・図書購入を予定している。韓国については,言語の問題があり,通訳謝金・翻訳謝金を使用する。 ・研究分担者の国内外調査を予定している。
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Research Products
(1 results)