2013 Fiscal Year Research-status Report
質保障のための学校運営とガバナンス改革に関する日仏比較研究
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24530990
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
藤井 佐知子 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (50186722)
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Keywords | フランス / 質保証 / 学校運営 / 学校評価 |
Research Abstract |
今年度は「学校基本計画法」(2005年)による学校運営改革のその後の進捗状況を確認しつつ、質保証に向けた施策がどのように展開しているかを日本の教育委員会改革の動向を踏まえて考察した。その結果次のことが明らかになった。 ①「学校基本計画法」に代わる新法「学校の再建のための基本計画法」が2013年7月に成立し、その中で質保証の重点は教員の養成・継続教育の拡充におかれ、その具体的方策として、新しい修士号「教育職」及び高等教師教育学院(ESPE)が創設された。その理論的根拠を定めるために教育関連職の使命と職務内容の再検討が国民教育省と主要教員組合代表の共同でなされ、2013年12月に「国民教育の職務の発展に関する最初の決定」として発表された。その特徴は、校長が管理面のみならず教授学習面でのリーダーシップを発揮すること、教員が学校内で協働で教育活動に取り組むことの重要性が説かれていること、に見られる。一方、自律的学校経営をめざす学校運営にとって重要な位置を占める学校自己評価に関しての記述は後退しており、これは、児童生徒の学力向上を格差是正の観点から迫るという政策理念に由来している。 ②上院に提出されたカール委員会報告書『ピラミッドからネットワークへ:学校のための新しい構造』(2011年)で主張された、国の関与の縮減と地方公共団体への主導権の移行、とりわけ州レベルでの「教育長官職」の創設に関して、日本の教育長・教育委員長の権限と職務内容に関する議論と比較考察した。そこには、関係者との協働の強調という共通点があるが、教育長官職がより多くの権能を持ち、これをめぐる議論も日本ほど抵抗感はない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は勤務校の役職の関係で十分な研究時間を確保できず、掘り下げた文献研究ができなかった。また、当初計画では、フランス現地でフィールド調査を行う予定だったが、日程的に十分な時間がとれなかったため、インタビュー調査に終わってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度まず、文献研究の充実に加え、HPから地方レベルでの学校評価システムの構築状況と目標契約制度による学校改善の実施状況を探る。そのための研究時間を確保したい。さらに、研究レビューを受けるとともに、昨年度できなかったフィールド調査を実現するために研究者と早めに連絡を取り、調査計画を立案していきたい。同時に、日仏比較研究のフレームワーク案を作るために、日本の学校改善、質保証に関する議論を精力的に検討し、私案のフランスへの適用可能性について探りながら進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張におけるレート換算において誤差が生じたため 基本的な文献はそろっているが、新たに必要な文献(洋書、和書および教育・行政関連雑誌)の購入に物品費をあてる。また、最終年度であるので、必要なアンケート調査の実施とヒヤリング調査のために海外旅費を使用する。さらに、国内で研究成果の発表のために国内旅費を使用する。
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