2013 Fiscal Year Research-status Report
小中連携、一貫の実践における教師の学習過程の分析と支援システムの開発
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24530994
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤江 康彦 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90359696)
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Keywords | 小中一貫教育 / 教師の学習 / コンサルテーション |
Research Abstract |
研究協力校を平均月3回程度訪問し、管理職とともに小中一貫校の学校経営や授業、行事のあり方について協議し検討した。授業を中心とした教育実践を観察し小中一貫教育校における教師や子どもの活動の様相を理解し、可能性や課題を整理した。とりわけ、①7年生(中学1年生)4月当初の授業、②6年生3学期の「卒業」に向けた教師の心理的節目づくり、においては小中一貫教育校だからこそ小中の節目を意図的に創り出そうとする教師の行為がみられた。また、③小中合同運動会の準備過程においては運動会に対する小中相互の位置づけや練習の進めかたの違いが明らかになった。その差異の自覚化に教員間の関係性形成や学習の契機の可能性が示唆された。 ほぼ全ての教師に対して面接調査を実施した。開講2年目にあたる本年度は、多くの教師から学校としての安定と自身の小中一貫教育校への慣れについての声が聞かれた。取り組みの記録化や蓄積の可能性も語られ、一貫教育校の教師としての自己効力感や取り組みの持続への意識がみられた。本年度新規に着任した教師からは戸惑いが語られたことから、1年間の経験の有無が教師としての学校適応に大きく影響していることが明らかとなった。また、昨年度小中一貫教育の課題として語られたことが、今年度は引き続き課題として語られる一方で「解決すべき」課題としてではなく新たな取り組みの契機となる可能性(下位集団の編成や子どもの自治的活動の活性化など)を有するものとして位置づけられていた。さらに、小中一貫教育校への好意的な評価として、昨年度は教師自身にとっての意義が中心的に語られたのに対して、今年度は具体的な異年齢の子ども同士のかかわりなど具体的な子どもの姿を事例として語られていた。 これらの結果は、適宜管理職にフィードバックするとともに2014年度の校内研修やコンサルテーションにおいて教師にフィードバックする計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目に引き続き、小中の教師それぞれへの面接調査を実施し、語りの変容をとらえた。とりわけ、適応の様相、葛藤への対処のあり方としての違和感の受容、などが明らかとなった。多くの教師からは、面接調査に臨むことを通して、自身の小中一貫教育への評価、子ども観や教育観などが整理、対象化されたことが語られた。面接調査自体が教師の学習への契機となっていた可能性がある。 しかし、一年目から二年目への変容の背景となり得る出来事を観察調査データと照合させて明らかにする作業は十分に進んでいない。加えて、昨年度面接から明らかになった事柄を教師の学習の過程として再構成する作業が残されており、併せて三年目の課題である。 二年目は、7年生(中学1年生)4月、6年生年度末、5月の小中合同運動会など、時期ごとに課題となり得る活動を特定し、集中的に観察して小中一貫校の教育活動を理解することとなった。小中の移行期には教師が意図的に段差をデザインして子どもの発達を促そうとしており、小中一貫教育におけるカリキュラムマネジメントのあり方にも示唆的であった。 しかし、対象校において得られた記録を対象化するための他校や他校区における調査についてはまだ開始の手続きをしている段階であり、今年度集中的におこなう必要がある。 さらに、調査結果に基づくコンサルテーションの一環として、5月、8月の教員研修においてフィードバックした。教師にとっての課題は小中一貫教育に関わることはもちろん、学級経営、授業づくりから自身のキャリアアップまで多様であり、授業後に個別にやりとりをおこなう場合もあれば、研修会において事例として紹介し共有することもあった。 しかし、これらは単発のコンサルテーションである。システムとして学校経営と連動させたかたちをとるコンサルテーションシステムの構築については今年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.観察や面接によって得られた調査データの整理と理論構築:面接によって得られた教師の語りを、小中一貫教育校において教師がどのような経験をし、それをどのように省察し評価しているのかという観点から質的に分析することで、教師の学習の契機が小中一貫教育校の教育活動にどのように埋め込まれているのかを明らかにする。同時に、観察によって得られた教室談話を、小中一貫教育校における教師や子どもの行為がどのように生成され変容していくのかを、文脈を含めて質的に分析することで、活動システムと教師の学習との関連を明らかにしつつ理論を構築する。 2.調査対象の拡張:対象校の設置されている自治体における別の小中一貫教育校や別の自治体の小中一貫教育校に対する調査を実施し、本対象校における実践の対象化を図るとともに小中一貫教育校の多様なありかたを探る。すでに申請者が有する当該の自治体の教育委員会との連携体制をより緊密なものとすることで実現の可能性を高めることとする。 3.コンサルテーションの計画的実施と支援システムの開発:調査データに基づくコンサルテーションを計画的かつ継続的に実施する。定期的なコンサルテーションの契機を設けることや、特定の課題についてのプロジェクトを立ち上げそれに参加を促すことを通して、教師自身が子どもの発達や小中一貫校における教育実践のありかた、個々の教師の課題について構造的にとらえ、改善案を考えていくことを支援する。さらにこの過程自体の記録を採取し、コンサルテーションシステムの評価をおこないモデル構築に反映させる。
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Research Products
(1 results)