2012 Fiscal Year Research-status Report
キャリア教育・キャリアガイダンスにおけるデマケーションに関する実証的研究
Project/Area Number |
24531004
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
佐藤 史人 和歌山大学, 教育学部, 教授 (80324375)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 職業指導 / 教育職員免許法 / 課程認定 |
Research Abstract |
今年度は当初の計画通り、教員免許状「職業指導」の発行状況や発行機関などに関する実証的な調査研究を行った。その結果は日本産業技術教育学会近畿支部第29回研究発表会において口頭発表し、「中学校・高等学校免許状「職業指導」に関する発行等状況の実態調査研究」(和歌山大学教育学部紀要(教育科学)第63集2013年2月)として論文にまとめた。今回の調査研究によって明らかになったことは、以下の3点である。 第一に、2012年度は①取得者数が少ないこと、②当該免許に関する教員の募集および採用が全く無いこと、③現職教員の免許保有者割合が極めて低いことから「職業指導」が他の校種・教科に比べて、極めて異例の状況にある。第二に、免許法施行規則では「職業指導」は普通免教科として位置づけられている。しかし、「国語」や「数学」などの教科と異なり、学習指導要領に規定される教科としては存在していないことに特徴がある。学校の校務分掌ないし教育活動において当該免許が必要となる職務内容が存在し、専門の能力が求められているので、独自の免許が設定されている。「職業指導」は、免許法に規定されている位置づけでみれば他の教科と同様であるが、学校教育現場においては、むしろ進路指導などの教育活動にかかわる教職員が必要とする免許であると考えられる。「進路指導主事」という「充当職」はあるものの、必ずしもこれは「職業指導」免許状取得を資格要件とはしていない。このように、「職業指導」免許状は,特殊な位置づけとなっている。第三に、「職業指導」の課程認定を受けている大学・学部等の教育課程において,学科や担当教員の専門性によって講義科目およびその内容の傾向が異なっていることがいえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教員免許状の1つである「職業指導」はその存在自体も知られていないように、この分野の現状を正確に調査し、実態を解明すること自体が本研究のねらいのひとつである。研究期間の初年度にこの課題・ねらいについて成果をまとめ、学会発表および論文として公刊することができたので、初年度の進捗状況は良好と判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在の状況に関して調査及びその分析が一定程度できたので、これに関連づけて以下の課題について今後取り組んでいきたい。 第一に、現在の「異例」な位置づけとなった「職業指導」の教員免許状の成立の過程とその後の推移を事実に即して解明すること、である。第二に、学校における教員の職務(デマケーション)の特殊性とのその実態を解明すること、である。第三に、「職業指導」の存在意義とその役割を分析すること、である。加えて、第四として、これら3つの課題を現実の教育実践、例えば特定の高校の事例を詳細に調査・検討することを合わせて実施する。 これらの課題を成し遂げることで、現代社会における職業指導やキャリア教育の社会的効用やその在り方について示唆を得るとともに、今後の職業指導やキャリア教育の具体的・実践的な活動の基本的理念を議論し、モデルを提供できるよう研究を進捗させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では上記3つの課題のうち特に第一の課題である「職業指導」の教員免許状の成立の過程とその後の推移を事実に即して解明することを重点に研究を進める予定である。 教育職員免許法の成立過程に関する史料の発掘や入手、国会や文部省における法案・政策立案に関わる史料・文献等の収集・分析が重要となる。そのためには収集のための出張や収集した史料の整理分類及び分析作業が不可欠な作業となり、そのための旅費や資料整理の作業人件費への研究費使用を予定している。史料や関連文献の複写費や購入費への使途も予定している。 また、第四の課題に関連して、高校教育現場等への聞き取り調査などの旅費も必要である。
|
Research Products
(2 results)