2013 Fiscal Year Research-status Report
キャリア教育・キャリアガイダンスにおけるデマケーションに関する実証的研究
Project/Area Number |
24531004
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
佐藤 史人 和歌山大学, 教育学部, 教授 (80324375)
|
Keywords | 職業指導 / 教員免許状 / 進路指導 |
Research Abstract |
初年度は中・高校教員免許状「職業指導」の現状について、免許状の発行状況や単位認定を行っている大学の講義等の免許取得に関する現況を整理した。これと相互に補完する研究課題として、第2年度である2013年度は、「職業指導」の成立時の事実経過の整理とその特徴について研究を進めた。「職業指導」は、例えば教科の内容に関連する内容構成とはなっていないなど、中・高校の他教科の免許状とは異なる側面を持っていた。このことは戦後の教員免許制度成立時からの特徴であり、一貫してその特徴を備えていたことが今年度の研究によって明らかにされた。戦後の教員免許制度及び職業指導に関する文献や史料の収集も一定程度進んでおり、当時の事実経過が整理できている。 しかし、戦前期の学校における職業指導の取り組みは、教師による職業斡旋や子どもの適性等の把握など教科の学習・指導とは異なる内容と方法を持っており、一般的な教科とは位置づけが同じではない。こうした相違がありながら、戦前戦後の論議を踏まえて、結果的に中・高校の教員免許に「職業指導」を新設したことの意味は、戦後の新教育の影響を受けながらも、戦後日本固有の社会事情と学校文化の影響があったことを看取ることができる。 またその一方で、「職業指導」を教科と位置づけなかったことは、その後の戦後教育の普及と定着の過程において、上級学校への進学を第一とするいわゆる学歴主義などと相まって、その存在意義を明らかにすることはできず、現在のキャリア教育への注目の時期まで機能不全となったことも事実である
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体計画にある「職業指導」免許状の現状分析に続き、今年度は歴史的調査および分析を行うことができた。研究で解明された結果の概要は日本産業技術教育学会近畿支部第30回大会(兵庫教育大学)において「中等教育段階における教員免許状「職業指導」に関する研究」として報告済みである。また、この研究発表に基づいた内容は、論文化の手続きも進行中である。 本研究のもうひとつの課題である学校におけるキャリア教育や進路指導の実態に関する調査研究に関しては、昨年度の引き続き高校等を対象として続けてきており、調査の実績は順調に積み上げてきている。すでに調査の一部は、佐藤史人「関西における職業教育 第1節~第3節」『日本と世界の職業教育』(2013年 法律文化社 p.30-40)にまとめており、刊行済みである。以上の進捗状況から、計画通り研究が進んでいると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度なので、これまでの個別の研究をまとめることを主な研究内容とする。そのためには、「職業指導」現在及び歴史的成立過程に関して、通史的な観点から学校のおける「職業指導」の役割と意義を解明することが課題である。さらに教員免許状「職業指導」の有り様から現代の学校におけるキャリア教育や進路指導を担う教職員の能力や「デマケーション」に関する考察を深めることが本研究の目指すところである。 上記の課題を取り扱うためには、現実のキャリア教育や進路指導に実践について実証的に調査・分析をすることが必要となる。これらの作業に関してはこれまで十分に調査できておらず、今年度の重点課題として積極的に実施していく。具体的には、学校現場への訪問や聞き取り調査による教育実践の検証とこうした事例を分析するための論点整理と新たな分析視角の確立のために、学会・研究会への参加及び自主的な協議の場の設定を行い予定である。 これまでの調査及び資料収集によって得られた資料・データ等に関して効率的な分析・考察を行うことが、最終年度には不可欠である。そのために当初の計画通りに、基本的なデータ処理・解析はアルバイト補助者に分担させ、効率化・短期間化をはかる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度計画にそって予定していた調査出張が本務校の校務により実施できず、年度末に予算執行ができなかった。 前年度に予定していた出張の内、実施できなかったものは1つであるので、次年度の早い時期に実施する予定である。当初計画における次年度の実施には影響はない。
|
Research Products
(3 results)