2012 Fiscal Year Research-status Report
私立幼稚園における実効のある教育目標の明確化手順の開発と類型化
Project/Area Number |
24531005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
横松 友義 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10241192)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 私立幼稚園 / 教育目標 / 保育目標 / 実効 / 明確化 |
Research Abstract |
これからの幼稚園においてカリキュラム・マネジメントを行っていくためには、実際に効力のある教育目標の明確化が不可欠であるが、その方法論は未だ確立されていない。そこで、本研究では、まず私立幼稚園に範囲を限定し、その方法論の確立を目指している。 平成24年度には、岡山市と倉敷市それぞれにおいて、教育目標明確化の際に特に重視されるであろう3点(園長の見解、保育者による協議、保護者・地域の声の反映)各点ごとに、他園と比較してより重視していると言われる園を選定し、調査協力を依頼し、合計6園で研究を実施している。 まず、実効のある保育目標(幼保一体化が進行しつつある状況を踏まえ、「教育目標」という表現を、幼稚園と保育園の両方において通用する「保育目標」という表現に変更している)の明確化が必要であることを所属保育者に説明する資料を考案し、実際に説明した上で、分かりにくい点について調査している。その結果を踏まえて、考案した資料をどのように修正すれば、実効のある保育目標の明確化の必要性が所属保育者に納得できる資料にできるかを考察している。 次に、園の保育目標明確化手順を左右する可能性のある事柄について保育目標関連図書を調査し整理した上で、それらの事柄をどれだけ考慮するかについて、各園の園長に半構造化面接を実施し、その結果から、保育目標明確化の際に考慮すべき前提条件について考察している。 さらに、各園で実際に達成を目指している保育目標について考察するために、一方では、教育課程、指導計画、園便り等の既存資料を収集し、他方では、特色として強調される保育実践とそれぞれの時期を代表する保育実践を中心に、1年間の保育の概要が理解できる場面をビデオカメラで撮影している。また、筆者は、2か月に1度程度、各園で保育実践を観察・記録する共に、収集資料において不明な点を中心に聞き取りも行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、研究を実施した6私立幼稚園の園長を対象に、保育目標明確化の際に考慮する事柄に関する半構造化面接を実施し、その結果に基づいて、保育目標明確化手順を左右する前提条件について考察している。ただし、その成果は、平成25年度の日本保育学会の大会で発表することになっている。 この成果発表が次年度に行われる点以外は、研究は平成24年度の実施計画通りに進行している。したがって、現在までの研究目的の達成度については、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究実績を踏まえて、平成25年度の研究を次のように変更する。 第1に、計画では、各園で実際に達成を目指している保育目標について考察するために、1年間、平成25年5月頃まで、園内資料を収集することにしていた。しかし、平成24年度の段階で、教育課程等の既存資料は1年間を通してのものを収集でき、その資料とこれまで収集した映像資料とから総合的に考察して、実効のある保育目標の案を示す資料は作成できると判断する。保育目標明確化手順を左右する事柄に関する研究成果はすでに得ているので、収集資料とその成果とで、実効のある保育目標の案とそれへの関係者の関与手順案を記載したものを4~5月に作成し、園長等に、検討する素案として提示することが可能と判断する。この計画変更により、研究結果についての総括的考察を早め、学会発表を早め、関係専門家に批判・助言をより早く受けることができる。 第2に、第1の研究成果として、実効のある保育目標明確化手順の諸類型案を得ることができ、その案についての批判的検討を依頼する形で、岡山市及び倉敷市の他の私立幼稚園の園長等から専門的知識の提供を受けた上で、その諸類型を修正・発展させる計画である。平成25年度には全対象園長等の半数から専門的知識の提供を受ける計画であったが、第1の研究推進に伴い、その対象園長等の数を増やしたい。 第3に、平成24年度に、幼稚園現場対象の、実効のある保育目標明確化の必要性を説明する資料についての研究成果を発表したが、その資料内で根拠とした法規に対して批判的見解を持ったり、その法規に基づく保育目標の批判的検討を重視していなかったりする研究者の存在が明らかになった。本研究の成果を学会で発表する際には、実効のある保育目標の明確化の重要性をそうした研究者にも納得できる論述が必要であると判断し、そのための研究を新たな課題としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
倉敷市で調査を行う際、調査交通費と調査日当費を計上していたが、大学の公用車を使用したため、不必要となった。また、保育現場でのビデオ記録のアルバイトを園の職員の方に依頼する予定であったが、ボランティアで行ってくださることになり、不必要となった。また、デジタルHDビデオカメラレコーダーを予算より安価で購入できた。こうした状況により、次年度使用額が生じた。 平成25年度の研究費使用計画は、次の通りである。平成24年度の保育目標明確化手順を左右する事柄に関する研究成果と「今後の研究の推進方策」の第1にあげた研究の成果を学会大会で発表するために、成果発表交通費と成果発表宿泊・日当費を使用する。第2の研究における園長等による批判的検討を依頼する際に、専門的知識の提供費を使用する。提供される専門的知識については、録音し文字化するので、資料作成費を使用する。以上の研究の過程で、その進捗状況について研究者に評価・助言を求める際に、専門的知識の提供費を使用する。また、必要と考えられる著書を購入するために、保育目標関係図書費を使用する。 次年度使用額については、この一部に当てる予定である。
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