2012 Fiscal Year Research-status Report
アメリカの学術学会における女性研究者支援政策の研究:女性会派から専門学会への展開
Project/Area Number |
24531024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部, 教授 (60153912)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 女性研究者支援(アメリカ合衆国) / 高等教育論 / アメリカ合衆国大学史 / ジェンダー / 教育政策 |
Research Abstract |
Coordinating Committee on Women in the Historical Profession(女性歴史家調整委員会、以下、CCWHPと略記)は、キャロル(Berenice A. Carroll, 1932-)とラーナー(Gerda Lerner, 1920-2013)という二人の女性歴史家が中心になってアメリカ歴史学会(以下、AHAと略記)の1969年年次大会において「AHAが設立する公式の委員会やAHAが採用する決議とは完全に独立し、果たすべきすべてのことを徹底的に議論し、圧力をかけ続け、情報の流通をおこなう」 ための会派として結成したものであり、 (1)①歴史専門職へ女性をリクルートすること、また歴史専門職における女性に地位の向上、②歴史専門職における女性差別への反対、③女性史分野における研究と教育の振興、という三つの目的を掲げ、 (2)最初の執行部は、歴史学における女性あるいは広く女性問題についての非専門家から構成されていた。 (3)AHAのカウンシルへ、女性歴史家が直面している問題について調査し報告するための女性委員会をつくるように請願書と決議文を提出した。 創立時から、「社会運動(上記目的の①と②)」と「教育・研究(同上、③)」の双方を抱えた組織の困難さに直面しており、それはたとえば、二人の共同代表をおいて、「社会運動」と「教育・研究」を分担するという組織の規約をつくったものの、1972年度は共同代表が一人のみになるというように、後続執行部選出の難航さに直面する。その結果、1974年には新たに、女性史会議グループ(Conference Group on Women's History)を設立し、こちらのグループが「教育・研究」を担当し、組織的分離をおこなわざるをえなくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題3(女性研究者への支援政策によって、学会の中で女性研究者の活動の場が拡大するにつれ、当該の学会は、ジェンダーの視点の導入による学問上のプラクティス革新という課題にどのような役割を果たしたのか。また、クライメイトの変革についてはどうであったのか。これは、人文社会科学系三学術学会で差異が見られるのか)のインタビュー調査については、社会学分野が未着手であるが、これを除いては、順調な進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
女性研究者支援研究には、①連邦・全米というマクロレベル、②個別大学・研究機関というミクロレベル、そして、③その中間に位置する学術学会レベルがあり、このうち、学術学会レベルでは、①学術学会レベルの女性研究者支援政策はマクロ・ミクロ双方へ影響力を行使しえること、②女性研究者が、個別大学等を超える学術支援ネットワークの中に参入できること、③学術学会は、研究の主体としての女性を支援するだけでなく、研究の客体としての女性の研究をも支援するという二重の機能を果たしえること、というのが本プロジェクトの基本認識であった。研究を進めた結果、この認識そのものは有効であると判断したが、上記それぞれの①②③は一種の連関構造をもっており、その理論的な解明が不可欠であると思われる。 調査対象とした学術学会の中で、Sociologists for Women in Society については予想を超える質・量のアーカイブズ文書であり、他方で、Association for Women in Psychologyについては、さらに関連の調査が必要である。今後、これらを他の学術学会の場合とどのように研究上の整合性をとるかが課題の一つである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
史料分析という点では、前年度に史料収集のみをおこなった、Sociologists for Women in Society の文書の分析と同時に、それぞれの女性会派の母体となった学術学会における女性研究者支援政策の解明(とりわけ、アメリカ心理学会とアメリカ歴史学会)のためのアーカイブズ文書の海外学術調査を中心におこなう。 上記の海外学術調査の機会に合わせて、研究課題3で未着手になっているインタビュー調査を実施する。
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